歌詞「梅ごよみ~二幕目・深川尾花屋奥座敷~」
2026年2月 歌舞伎座「猿若祭二月大歌舞伎」バージョン
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「梅ごよみ~二幕目・深川尾花屋奥座敷~」
神垣に植えし国女が山桜
変わらぬ花に いにしえを
思えば八重の咲く頃は
深川辺りの辰巳風
「セリフ」
顔へかかりし青柳の
鬢のほつれは誰と寝し
口舌の果てとよそ目には
浦山吹きの仇名ぐさ
目出し紅葉の色に出て
浮名の立ちし岡惚れに
「セリフ」
目立つ岡目の灯篭も
灯影慕うて飛ぶ蝶の
「セリフ」
思い佃の送り舟
網手のばちに白魚の
首尾も四つ手の遠かがり
「セリフ」
灯影をいとう簾ごし
芝浦かすむ春の夜の
「セリフ」
互いの胸にしみじみと
はなす話もいつしかに
「セリフ」
客で会いしも昨日今日
浮気を捨てし中町に
座敷もひけてしっぽりと
小雨の音におりながら
「セリフ」
かこつ涙も無理酒に
よそ目紛らす浮き思い
「セリフ」
洲崎へ帰る雁金の
結ぶ縁も深川の
水に浮名や流すらん
水に浮名や
(清元引っ込み)
2026.1.31現在![]()
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歌詞「玉兎」
2025年 京都南座「十二月吉例顔見世興行~尾上菊之助改め 八代目尾上菊五郎襲名披露 尾上丑之助改め 六代目尾上菊之助襲名披露~」バージョン
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「玉兎」
実に楽天が唐詩に
中に餅つく玉兎
餅じゃござらぬ望月の
月の影勝
飛団子 やれもさうややれやれさてな
臼と杵とは女夫でござる
やれもさ やれもさ
夜がな 夜ひと夜 おおやれ
ととんが上から月夜にそこだぞ
やれこりゃよい子の団子が出来たぞ
おおやれ やれさて あれはさて これはさて
どっこいさてな よいとよいとよいとよいと よいとなとな
これわいさのよい これはさておき
昔々やつがれが
手柄を夕べの添乳にも
婆食った爺やがその敵
うつやぽんぽらぽんと腹鼓
狸の近所へ柴刈りに
きゃつめも せたら大束を
えっちりえっちり えじかり股
しや御参なれ こここそと
後から火打ちで かちかち
かちかち かっちかち かちかちの山という内に
あつつ あつつ そこで火傷のお薬と
唐辛子なんぞで みしらして
今度は猪牙船 合点だ
こころへ狸に土の船
面舵 取り舵 ぎっちらこ
浮いた波とよ 山谷の小舟
焦がれ焦がれて通わんせ
こいつは面白おれ様と
洒落る下よりぶくぶくぶく
のうのう これはも泣きっ面
よい気味しゃんと敵討ち
それで市がさかえた
手柄話に乗りがきて
お月様さへ 嫁入りなさる
やっときなさろせ とこせとこせ
年はおいくつ十三七つ
見てもうまそな品物め
しどもなや
風に千種の花うさぎ
風情ありけるゥゥゥ
幕
2025.11.30現在
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「玉兎」の解説はこちら 國惠太夫WEBSITE「玉兎」
「流星」歌詞 第二回 市川團子 新翔春秋会
京都芸術劇場・春秋座 (京都芸術大学内)
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「流星」
それ銀漢と唐うたに 深くも願う夫婦星
その逢瀬さえ一年(ひととせ)に 今宵一夜の契り故
まだ明星の影薄き 暮れぬうちより織女が
待てば待たるる牽牛も 牛の歩みのもどかしく
心は先へ行き合いの 八重の雲路を辿り来る
織女「おなつかしや我がつま様 おかわりとてもあらざりしか」
牽牛「おもえば年にただ一度 この七夕に逢うのみにて」
織女「かりの便りもなき身の上」
牽牛「なつかしきは いかばかり」
織女「とりわけ去年は雨降りて」
牽牛「そもじに逢うも三年越し」
しかも続きし長雨に 八十の河原に水増して
妻こし船に棹させど とわたるよすが明け近く
長鳴き鳥に短夜を 思えば牛と引く綱も
あとへ引かるる後朝(きぬぎぬ)に つれなき別れも昨日と過ぎ
今日は雨気もなか空に 心も晴れて雲の帯び
解けて寝る夜の嬉しさと 寄り添う折から闇雲に
流星「御注進 御注進」
呼ばわる声も面高く(おもだかく) 飛んで気軽な夜這い星
色の世界へ生まれしからは 色をするのが特鼻褌(とくびこん)
寝るに手まわし宵から裸 ぞっと夜風にハッハッハッ ハックサメ
彼奴が噂をしているか エエ畜生めと夕闇を 足も空にて駆け来たり
牽牛「誰かと思えば そちゃ流星」
織女「注進とは何事なるか」牽牛「様子はいかに」
流星「ハハーッ さらば候そろそろと 三つ合わせてさん候」
およそ夜這いと化け物は 夜中のものに宵の内
とろとろやろうと思いのほか 一つ長屋の雷が 夫婦喧嘩の乱騒ぎ
聞けばこの夏流行の 端唄の師匠へ落っこちて
気は失なわねど肝心の 雲を失い居候
そこで端唄を聞き覚え この天上へ帰っても つい口癖になるときも
小町思えば照る日も曇る 四位の少将が涙雨
ごろごろごろごろごろごろ エエごろごろごろ
聞く女房は呆れ果て マッコレそんなのろけた鳴りようでは
恐がるお臍で茶を沸かそう 鳴るなら大きな声をして
ゴロゴロゴロ ピカピカピカ ゴロゴロゴロ ピカピカピカ
ゴロゴロ ゴロゴロ ゴロゴロゴロゴロ ゴロゴロ・・・・・ピシャリっと
鳴らねばさまを付けられぬ と言えば
亭主は腹を立て それは昔の雷だ
大きな声で鳴らずとも 粋に端唄で鳴るのが当世
それがいやなら 出て行きゃれ
なに出て行けとえぇ
オオサッ 角を見るのも アァ厭になった
我がものと思えば軽ろし傘の雪
我がもの故に仕方なく 我慢をすりゃあつけ上がり
亭主を尻に引きずり女房 サア恋の重荷の子供を連れ
きりきりと出て行きゃれ
いえいえここは私の家
お前は婿の小糠雨 傘一本もない身の上
汝そうぬかせば了簡がと 打ってかかるを
ゴロゴロゴロ
ゴロゴロゴロと鳴る音に
傍に寝ていた小雷 コヨコヨコヨと起き上がり
コレ父さん可哀想に母さんを
背負った太鼓じゃあるまいし 何でそのようにたたくのじゃ
堪忍してとコヨコヨコヨ
かかる騒ぎに隣りから
婆雷が止めに来て
マママこれ お前方はどうしたのじゃ 夫婦喧嘩は雷獣も
喰わぬに野暮を夕立は どんな太鼓の八つ当たり 出て行との一声は
月が鳴いたか時鳥 いつしか白む短夜に まだ寝もやらぬ手枕や
アレおなるさんもくよくよと
愚痴なようだが コレマ泣いているわいな
端唄に免じて五郎介どの 了簡してとゴロゴロゴロ
いえいえ私しゃ 打たれたからは 了簡ならぬとゴロゴロゴロ
ならずば汝とゴロゴロゴロ
父さん待ってコヨコヨコヨ
これはしたりとゴロゴロゴロ
止めるはずみに雷婆 ウーンとばかりに倒るれば
こりゃころりではあるまいか
医者よ針医と立ち騒げば
入れ歯の牙を飲み込んで 胸につかえて苦しやと
云うに可笑しく雷親父
こいつは可笑しハハハ こいつは可笑しハハハ
プハハハハハ・・・
へそへそへそへそへそプハハハ・・プハハハ・・
婆は苦しくアイタアイタ アイタアイタアイタ
腹立っちゃいけね
宵のえ宵の口説は裏の背戸屋の
小溝の川へざんぶりざっと
もみや清水 上辺流して仲なおォォォり
流星「夫婦喧嘩のあらましは かくの通りでございまする」
かくの通りと手拭いで 汗を拭うて至りける
流星「あらもう夜明け さあさあ早うお床入り」
これから我らも色回り 日の目もあればと言い捨てて
流星「はや おさらば」
虚空はるかに
星が光るか光るが星か またもチラチラ迷わせる
西へ飛ぼうか東へ飛ぼうか どちへ行こうぞ思案橋
送りましょうか送られましょうか
せめて雲路の果てまでも
幕
※セリフは多少の違いがございます。
2025.11.1現在![]()
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流星の解説はこちら 國惠太夫WEBSITE「流星」
「種蒔三番叟」歌詞 第二回 市川團子 新翔春秋会
京都芸術劇場・春秋座 (京都芸術大学内)
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「種蒔三番叟」
その昔秀づる鶴の名にし負う 都のぼりの折を得て
おしえ請地の親方に 舞のけいこを志賀山の
振りもまだなる稚気に 忘れてのけし三番叟
おおさえ おおさえ 喜びありや喜びありや
我この所より他へはやらじと思ふ
にせ紫もなかなかに およばぬ筆に写し絵も
いけぬ汀の石亀や ほんに鵜のまね烏飛び
とっぱひとえに有難き 花のお江戸の御贔屓を
かしらに重き立烏帽子
天の岩戸のな 神楽月とて祝うほんその歳も
五ツや七三ツ見しょうと 縫の模様のいとさまざまに
竹に八千代の寿こめて
松の齢の幾万代も 変らぬためし鶴と亀
ぴんとはねたる目出鯛に 海老も曲りし腰熨斗目
宝づくしや宝船
やらやら 目出度いのえん 四海波風おさまりて
常盤のえん木の葉も繁る えいさらさ
鯉の滝登り 牡丹に唐獅子唐松を
見事にみごとにさっても見事に手をつくし
仕立栄えあるよい子の小袖 着せてきつれてまいろかの
肩車にぶん乗せて 乗せて参ろの氏神詣で きねが鼓のでんつくでん
笛のひしぎの音も冴えたりな さえた目元のしおらしき
中のなかの中娘を ひた つ長者が嫁にほしいと望まれて
藤内次郎が栃栗毛に乗って エイエイエイ
えっちらおっちら わせられたんので その意に任せェェェ申した
さて婚礼の吉日は 縁を定んの日を選み
送る荷物は なになにやろな 瑠璃の手箱に珊瑚の櫛笥
玉をのべたる長持に 数も調度いさぎよく
欲しかおましょぞ ひと枝折りて そりや誰に
愛し女郎衆の かざしの花に ほうやれ
恋の世の中 實戀の世の中 面白や
すぐにもあがり御目見得を
またこそ願う種蒔や 千秋萬歳 萬々歳の末までも
賑おう芝居と舞納む
幕
2025.10.31現在![]()
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種蒔三番叟の解説はこちら 國惠太夫WEBSITE「種蒔三番叟」
歌詞「吉野山」
2025年 歌舞伎座
錦秋十月大歌舞伎 通し狂言「義経千本桜」Bプロバージョン
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「吉野山」Bプロ
※赤=竹本連中
恋と忠義はいずれが重い 掛けて思いは計りなや
静に忍ぶ旅立ちや
馴れぬ茂みのまがい道 弓手(ゆんで)も馬手(めて)も若草を
分けつつ行けば あさる雉子(きぎす)のぱっとたっては
ほろろ けんけん ほろろうつ
なれは子ゆえに身を焦がす 我は恋路に迷う身の
ああ羨まし 妬ましや
谷の鶯な 初音のつづみ はつねの鼓
調あやなす音に連れて つれて真似草 音に連れて
遅ればせなる忠信が 吾妻からげの旅姿
背に風呂敷 しかと背負たらおうて 野道あぜ道ゆらりゆらり
軽いとりなりいそいそと 目立たぬように道隔て
静 「おぉ忠信殿 待ちかねましたわいな」
忠信「これはこれは静様 女中の足と侮って思わぬ遅参 まっぴら御免くださりましょう」
静 「ここは名に負う吉野山 四方の梢もいろいろに」
忠信「春立つと 云うばかりにや三吉野の」
静 「山も霞みて」
忠信「今朝は」
両人「見ゆらん」
見渡せば 四方の梢もほころびて
梅が枝唄う歌姫の 里の男子が声々に
我が夫が天井ぬけて据える膳 昼の枕はつがもなや
我が夫が天井ぬけて据える膳 昼の枕はつがもなや
可笑し烏の一節に
弥生は雛の妹背中 女雛男雛と並べておいて
眺めに飽かぬ三日月の 宵に寝よとは きぬぎぬに
急かれまいぞと恋の欲 桜は酒が過ぎたやら
桃にひぞりて後ろ向き 羨ましうは ないかいな
忠信「せめては憂さを 幸い 幸い」
姓名添えて賜わりし 御着せ長を取り出だし
君と敬い奉る しずかは鼓を御顔と よそえて上に置きの石
人こそ知らね西国へ 御下向の御海上 波風荒く御船を
住吉浦に吹き上げられ それより吉野にまします由
やがてぞ参り候らはんと 互いに形見を取り納め
実にこの鎧を賜わっしも 兄継信が忠勤なり
静 「なに継信が 忠勤とや」
誠にそれよ 来し方を
思いぞ出る壇ノ浦の
忠信「海に兵船 平家の赤旗 陸(くが)に白旗」
源氏の強者 あら物々しやと夕日影 長刀引きそばめ
何某は平家の侍 悪七兵衛景清と名乗りかけ
薙ぎ立て薙ぎ立て 薙ぎ立つれば
花に嵐のちりちりぱっと 木の葉武者
言い甲斐なしとや方々よ 三保谷の四郎これにありと
渚にちょうと打ってかかる 刀を払ろう長刀の えなれぬ振る舞い いづれとも
勝り劣りは波の音 打ち合う太刀の鍔元(つばもと)より 折れて引く潮 帰る雁
勝負の花と見すつるかと 長刀小脇にかい込んで 兜の錣(しころ)を引っ掴み
後へ引く足 たじたじたじ 向こうへ行く足 よろよろよろ
むんずと錣をひっ切って 双方尻江に どっかと座す
腕の強さと言いければ
首の骨こそ強けれと
ムフフフフフ ダハハハハハ
笑いし後は入り乱れ 手しげき働き兄継信
君の御馬の矢面に 駒を駆け据え立ち塞がる
静 「おぉ聞き及ぶその時に 平家の方にも 名高き強弓」
能登守
静 「教経と」
名乗りも和えず よっ引いて 放つ矢先は恨めしや
兄継信が胸板に たまりもあえず真っ逆さま 敢え無き最後は武士の
忠臣義士の名を残す 思い出ずるも涙にて 袖は乾かぬ筒井筒
掛かるところへ早見の藤太 家来引き連れ立ち至る
※早見の藤太・家来 セリフ (舞台でお楽しみに!)※
禰宜が鼓に鈴振る手元 ちょっと鳥居を ありゃありゃしてこい
飛び越え狐 愛嬌も 宇賀の御霊は玉姫稲荷
妻恋 染めて嫁入りして
そこらでしめたぞ天日照り
堅い契りのお岩様 四ツ谷でお顔を三巡りに
好いたらしいと思うたる 縁に引かれて車咲き
ちょっとおさえた強力の
袖すり抜けてどっこいな
えぇもうしつこい そこいらで
翁稲荷か とうとうたらり 喜びありや烏森
いつか御身も伸びやかに 春の柳生の いと長く
枝を連ぬる御契り などかは朽ちしかるべきと
互いに諫め いさめられ 急ぐとすれど はかどらぬ 芦原峠 鴻の里
雲と見紛う三吉野の
麓の里にぞ
幕
2025.10.7現在
歌詞「吉野山」
2025年 歌舞伎座
錦秋十月大歌舞伎 通し狂言「義経千本桜」Aプロバージョン
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「吉野山」Aプロ
※赤=竹本連中
恋と忠義はいずれが重い 掛けて思いは計りなや
静に忍ぶ旅立ちや
谷の鶯な 初音のつづみ はつねの鼓
調あやなす音に連れて つれて真似草 音に連れて
遅ればせなる忠信が 吾妻からげの旅姿
背に風呂敷 しかと背負たらおうて 野道あぜ道ゆらりゆらり
軽いとりなりいそいそと 目立たぬように道隔て
静 「おぉ忠信殿 待ちかねましたわいな」
忠信「これはこれは静様 女中の足と侮って思わぬ遅参 まっぴら御免くださりましょう」
静 「ここは名に負う吉野山 四方の梢もいろいろに」
忠信「春立つと 云うばかりにや三吉野の」
静 「山も霞みて」
忠信「今朝は」
両人「見ゆらん」
見渡せば 四方の梢もほころびて
梅が枝唄う歌姫の 里の男子が声々に
我が夫が天井ぬけて据える膳 昼の枕はつがもなや
我が夫が天井ぬけて据える膳 昼の枕はつがもなや
可笑し烏の一節に
徳若にご万歳とは 君も栄えてましんます
愛嬌ありける柳ごし よい中村のやぐら幕
櫓太鼓のにぎにぎと 商い神の若えびす
繁盛まします その御徳に 御田の稲には穂に穂を栄え
宝御船萬石舟 色の実入りに今年綿
誠に目出度う さむらいける
やしょめやしょめ 京の町のやしょめ
売ったるものは何々 はまぐり はまぐり
蛤 はまぐり はまぐり
はまぐり見さいなと売ったるものは何々
はまぐり早き貝合わせ
弥生は雛の妹背中 女雛男雛と並べておいて
眺めに飽かぬ三日月の 宵に寝よとは きぬぎぬに
急かれまいぞと恋の欲 桜は酒が過ぎたやら
桃にひぞりて後ろ向き 羨ましうは ないかいな
忠信「せめては憂さを 幸い 幸い」
姓名添えて賜わりし 御着せ長を取り出だし
君と敬い奉る しずかは鼓を御顔と よそえて上に置きの石
人こそ知らね西国へ 御下向の御海上 波風荒く御船を
住吉浦に吹き上げられ それより吉野にまします由
やがてぞ参り候らはんと 互いに形見を取り納め
実にこの鎧を賜わっしも 兄継信が忠勤なり
静 「なに継信が 忠勤とや」
誠にそれよ 来し方を
思いぞ出る壇ノ浦の
忠信「海に兵船 平家の赤旗 陸(くが)に白旗」
源氏の強者 あら物々しやと夕日影 長刀引きそばめ
何某は平家の侍 悪七兵衛景清と名乗りかけ
薙ぎ立て薙ぎ立て 薙ぎ立つれば
花に嵐のちりちりぱっと 木の葉武者
言い甲斐なしとや方々よ 三保谷の四郎これにありと
渚にちょうと打ってかかる 刀を払ろう長刀の えなれぬ振る舞い いづれとも
勝り劣りは波の音 打ち合う太刀の鍔元(つばもと)より 折れて引く潮 帰る雁
勝負の花と見すつるかと 長刀小脇にかい込んで 兜の錣(しころ)を引っ掴み
後へ引く足 たじたじたじ 向こうへ行く足 よろよろよろ
むんずと錣をひっ切って 双方尻江に どっかと座す
腕の強さと言いければ
首の骨こそ強けれと
ムフフフフフ ダハハハハハ
笑いし後は入り乱れ 手しげき働き兄継信
君の御馬の矢面に 駒を駆け据え立ち塞がる
静 「おぉ聞き及ぶその時に 平家の方にも 名高き強弓」
能登守
静 「教経と」
名乗りも和えず よっ引いて 放つ矢先は恨めしや
兄継信が胸板に たまりもあえず真っ逆さま 敢え無き最後は武士の
忠臣義士の名を残す 思い出ずるも涙にて 袖は乾かぬ筒井筒
掛かるところへ早見の藤太 家来引き連れ立ち至る
※早見の藤太・家来 セリフ (舞台でお楽しみに!)※
禰宜が鼓に鈴振る手元 ちょっと鳥居を ありゃありゃしてこい
飛び越え狐 愛嬌も 宇賀の御霊は玉姫稲荷
妻恋 染めて嫁入りして
そこらでしめたぞ天日照り
堅い契りのお岩様 四ツ谷でお顔を三巡りに
好いたらしいと思うたる 縁に引かれて車咲き
ちょっとおさえた強力の
袖すり抜けてどっこいな
えぇもうしつこい そこいらで
翁稲荷か とうとうたらり 喜びありや烏森
いつか御身も伸びやかに 春の柳生の いと長く
枝を連ぬる御契り などかは朽ちしかるべきと
互いに諫め いさめられ 急ぐとすれど はかどらぬ 芦原峠 鴻の里
雲と見紛う三吉野の
麓の里にぞ
幕
2025.9.27現在
歌詞「うかれ坊主」
2025年 大阪松竹座「七月大歌舞伎~尾上菊之助改め 八代目尾上菊五郎襲名披露 尾上丑之助改め 六代目尾上菊之助襲名披露~」バージョン
ご観劇のお供に是非ご活用下さいませ!
「うかれ坊主」
男裸でなぁ 百貫かんの寒も
土用もわしゃ苦にゃならぬ ほんにえェ
お門へたった一文に 見限ぎられたる破れ衣
手桶と身柄一心に 浮世を渡る道楽寺
八宗九宗丸呑に 酒むに如来鼻の下
食う殿建立
「と来たりやな トトトトト」
トォきおいぐち
「さらば和尚が身の上話一寸ちよぼくにかけべえか」
やれェェどらが如来
「やれやれやれやれ ちょぼくれちょんがれ
そもそもわっちがすっぺらぽんの のっぺらぽん
のっぺらぽんのすっぺらぽんと坊主になった
いわれ因縁 コレ聞いてもくんねぇ」
然も十四のその春はじめて 一軒となりの 其又隣りの
「いっちくたっちく太衛門どんの 乳母さんとちょぼくり」
色のいの字の味を覚えて 裏のかみさん向うのおばさん お松さんにお竹さん
「しいたけさんに干瓢さんと」
さわり次第におててん枕で やった揚句が女郎と出かけて
「ヤレヤレ畜生め そこらでやらかせ」
手練手管にがららかかって 家にゃ片時おいども据らず
舟じゃ危ねえ お駕籠で来なせ
なんのかのとの親切ごかしに いよいよ首ったけ
はまってのめたり むくむくった
「そ そそそそ・・」
其時は
ぶん流したる大洒落に
さればこれから混ぜこぜ踊りはどうじゃいな
「オット来なせェ」
面白や
上り夜舟の 櫂や櫓じゃとて 舵を取ったえ
佐田や枚方 淀 水に車がぐるぐると
伏見へ着くえェ
「オーイ」
オーイおやじ殿 其の金こっちへ貸してくれ
与市兵衛仰天し いえいえ金では御座りません
娘化粧すりゃ 狐がのぞく
賽の河原の地蔵尊
一つっとや 一ト夜明くれば賑かで
賑やかで飾り立てたる 松ひと木変らぬ
色の世界に色なき者は
わしとかかさんと 糸取って居たら
殿御といいの
東上総のいちみの郡 村の小名をばかね
沖に見ゆるは肥後様のえぇ それそれ船よ
紋は九つ 九燿の星
蝶々とまれや 菜の葉がいやなら
葭の先へとまらんせ
とんび烏にならるるならば 飛んで行きたや主の側
主と二人でわしゃ暮すなら 酒で苦労もおきながし
鍋釜へっとい 銅壺薬缶にすり鉢か すりこぎか
ついでにおやじも 添えしゃいィィィなぁ
滅多に出まかせ足まかせ 源八和尚は雲をやみ
いさみ散らしてェェ
幕
2025.6.30現在![]()
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歌詞「お祭り」~2025年 歌舞伎座「六月大歌舞伎」バージョン~
ご観劇のお供に是非ご活用下さいませ!
「お祭り」
申酉の花も盛りの暑さにも
負けぬ気性の見かけから
(三味線 合の手)
言わずと知れしお祭りの
形もすっかりそこら中
行き届かせてこぶもなく
ここでは一つあそこでは
頭かしらと立てられて
ご機嫌じゃのと町内の
家主方も夕日影
風もうれしく戻り道
「セリフ」
じたい去年の山帰り
言うは今さら過ぎし秋
初の一座の連れのうち
面白そうな口あいに
好いたが因果 好かれたも
こころの二つはないわいな
そのときあいつが口癖に
諦めて何のかのと
ありゃただの人
赤ぼんぶの我々なりゃこそ
滅法界に迷いやす
お手が鳴るから
銚子の替わり目とあがってみたれば
お客が三人 庄屋ぽんぽん 狐拳
とぼけた色ではないかいな
(合の手)
引けや引け引け 引くものにとりては
花に霞よ 子の日の小松
初会の盃 馴染みの煙草盆
お洒落娘の袖たもと
下場の履物 内裏女郎の召し物
座頭のまわし 菖蒲に大根
御神木のしめなわ
又も引くものは色々ござる
湯元細工の剣玉ぶりぶり
そさま故なら心の丈を
示し参らせ候べくの
人形 筆売り この首を
長く出したり縮めたり
なんとのろいじゃあろまいか
(三味線 合の手)
よいよい よんやな
よいよいよんやな
やれよい声 かけろえ
ヤァやんれ引け引け
よい声かけてエンヤラサ
やっと抱き締め床の中から
小夜着蒲団をなぐりかけ
何でもこっちを向かしゃんせ
ようい ようい よんやな
良い仲同士の恋諍いなら
痴話と口説は何でもかんでも今夜もせ
オォ東雲の明けの鐘
ゴーンと鳴るので仲直り済ました
ようい ようい よんやな・・・
幕
歌詞「お祭り」2025年 歌舞伎座「六月大歌舞伎~尾上菊之助改め 八代目尾上菊五郎襲名披露 尾上丑之助改め 六代目尾上菊之助襲名披露~」バージョン
ご観劇のお供に是非ご活用下さいませ!
「お祭り」
申酉の花も盛りの暑さにも
負けぬ気性の見かけから
言わずと知れしお祭りの
形もすっかりそこら中
行き届かせてこぶもなく
ここでは一つあそこでは
頭かしらと立てられて
ご機嫌じゃのと町内の
家主方も夕日影
風もうれしく戻り道
祭のなぁ
派手な若い衆が勇みに勇み
身なりを揃えて ヤレ囃せ ソレ囃せ
花山車 手古舞 警固に行列 よんやさ
「セリフ」
ヤァやんれ引け引け
よい声かけてエンヤラサ
やっと抱き締め床の中から
小夜着蒲団をなぐりかけ
何でもこっちを向かしゃんせ
ようい ようい よんやな
良い仲同士の恋諍いなら
痴話と口説は何でもかんでも今夜もせぇ
オォ東雲の明けの鐘
ゴーンと鳴るので仲直り済ました
ようい ようい よんやな
そよが締めかけ中網
えんや えんやこれは あれはさのえ
引けや引け引け 引くものにとりては
花に霞よ 子の日の小松
初会の盃 馴染みの煙草盆
お洒落娘の袖たもと 下場の履物
内裏女郎の召し物 座頭のまわし
菖蒲に大根 御神木のしめなわ
又も引くものは色々ござる
湯元細工の剣玉ぶりぶり
そさま故なら心の丈を
示し参らせ候べくの
人形 筆売り この首を
長く出したり縮めたり
なんとのろいじゃあろまいか
(合の手)
実にも上なき獅子王の
萬歳千秋かぎりなく
つきせぬ獅子の座頭と
お江戸の恵みぞ
幕
2025.5.30現在![]()
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歌詞「忍岡恋曲者(権九郎)」~2025年「四月大歌舞伎」歌舞伎座バージョン
「黒手組曲輪逢引」の幕開きに清元「忍岡恋曲者(権九郎)」が掛かります。
ご観劇のお供に是非ご活用下さいませ!
「忍岡恋曲者(権九郎)」
絵に書かば墨絵のさまや 朧夜の空ににじみし月影も
忍ぶが岡を二人連れ 散り来る花の白玉に
鐘の音霞む権九郎 手に手を取りてそこはかと
谷中を越えて車坂 よそ目に見れば二本の
離れぬ杉の道行は あじな縁しを出雲にて
結び違いし神垣や 稲荷の森へ歩み寄り
権九郎「コレ白玉道々も言う通り 掟厳しい廓をば連れて退いた上からは 所詮江戸には居られぬぞや」
白 玉「江戸の内に居られぬとて どこへ行くのでありんすよ」
権九郎「ンサアどこと言うて当てはなけれど 生まれ故郷の上方へでも連れて行き
世間晴れて権九が女房 まず京なれば木屋町か 大坂ならば島の内 当分粋な へへへ座敷を借り」
下女が一人に 子猫が一匹 他には邪魔も新世帯
取り膳で食う楽しみは 一つ肴をむしり合い
箸の先での錣引き ひっくり返す皿小鉢
これはしたりと飛び退いて それ雑巾よ拾えよと
さんと呼びゃ ハーイと来る ぶちと呼びゃ ニャーンと来る
これを続けて呼ぶならば
おははいのハイと言やオニャニャのニャーンと鳴く
こんな騒ぎも痴話半分 嬉しかろうじゃないかいな
権九郎「なんと白玉そうなったら さぞそなたは嬉しかろうの」
白 玉「そりゃもうわちきが日頃の願い 嬉しゅうのうて何としましょう」
権九郎「うふふ あのまあ嬉しそうな顔わいな」
鼻毛のばして差し覗く 馬鹿げし顔を 流し目に
白 玉「そう聞く上は少しも早う 追手のかからぬ内 わちきゃ上方へ行きとうござんすが 聞けば遠い所とやら お前路用がござんすかえ」
権九郎「おっとそこに如才があるものか 今日千葉様へ納めに行く 為替の金の五十両 ちゃんと着服しておいた これを路用に通し駕篭 伊勢参宮から大和をば 廻った所がまさか二分にはなりゃしまい」
白 玉「そんならそこに持って居やしゃんすかえ」
権九郎「何で嘘をつくものか 疑わしくば サッこれを見や」
白 玉「ンまぁこりゃほんにお金でござんすな」
権九郎「しかも小判で五十両 これさえあれば大丈夫」
押し戴けば後ろより 財布めがけて一掴み
あわやと驚く権九郎 池の深みへ
白 玉「伝次さん」
伝 次「アッこれ」
むらかもめ
白 玉「伝次さん うまくいったねえ」
伝 次「そうよ 濡れ手で粟の五十両 この金の手に入ったのも みんなお主のお蔭 白玉いい度胸になったなぁ」
白 玉「これもみんな お前に仕込まれたんだよぉ」
伝 次「俺だといって まさか鋏を持って生まれやしねぇ これでも以前は武士のたね 藁の上から町家へやられ 育ちが悪さに巾着切り 悪いこたぁ覚え易く 今じゃどこの盛り場でも 顔を知られた牛若伝次 然し盗んだもなぁ一文でも 身に付けたこたぁありゃあしねえや 二人が仲の離れねえのも これが悪縁とでも言うんだろうよ」
白 玉「今更言うのも愚痴ながら お前とこういう仲になったのも 忘れもせぬ 去年の秋」
まだ新宅の店先を そそるいなせの地廻り衆
多くの中でこなさんが ふっと目につき物言いかけ
初手は浮気な格子色 朋輩衆になぶられて
話もならず裏茶屋で たまに逢うさえ束の間も
涙の雨に離るるが ここが苦界じゃないかいな
折しも告ぐる後夜の鐘 伝次はすげなく立ち上がり
伝 次「またもや追手のかからぬうち 世田谷道から厚木街道」
白 玉「あぁもし その道は寂しいかえ」
伝 次「どうせ駆け落ちをする道だもの 賑やかなこたぁありゃあしねえや」
白 玉「それだって何だか気味が悪いねえ そりゃそうと あの権九郎はどうしたろうねえ」
伝 次「どうするものか 土左右衛門よ」
白 玉「エェ」
伝 次「エェ ぐずぐずしねえで 早く支度をしねえか」
白 玉「アイ」
アイと白玉帯締め直し 二世を掛けたる中島を
あとに三橋や清水門 流れの里へと渡りゆく
白玉「伝次さん」
伝次「白玉達者でいろよ」
人目いとうてェ
幕
※演出の都合上、歌詞や台詞が変更になる可能性があります。
2025.4.1現在![]()
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忍岡恋曲者(権九郎)の解説はこちら(國惠太夫Web Site「権九郎」)
歌詞「落人」~2025年「三月大歌舞伎」歌舞伎座バージョン
ご観劇のお供に是非ご活用下さいませ!
「落人」
落人も見るかや野辺に若草の すすき尾花はなけれども
世を忍び路の旅衣 着つつ馴れにし振袖も
どこやら知れる人目をば かくせど色香梅が花
散りてもあとの花のなか いつか故郷へ帰る雁
まだはだ寒き春風に 柳の都 後に見て
気も戸塚はと吉田ばし 墨絵の筆に夜の富士
よそめにそれと影くらき 鳥のねぐらを辿り来る
勘平「鎌倉を出でてようようと ここは戸塚の山中 石高道で足は痛みはせぬかや」
お軽「何の まあそれよりは まだ行先が思はれて」
勘平「そうであろう 昼は人目をはばかる故」
お軽「幸い ここの松かげで」
勘平「暫しがうちの足休め」
お軽「ほんにそれが よかろうわいなぁ」
何もわけ無き うさはらし 憂きが中にも旅の空
初ほととぎす明近く
色で逢いしも昨日今日 かたい屋敷の御奉公
あの奥様のお使いが 二人がえんやの御家来で
その悪縁か白猿に よう似た顔の錦絵の
こんな縁しが唐紙の 鴛鴦(おし)の番(つがい)の楽しみに
泊り泊りの旅籠やで ほんの旅寝の仮枕
嬉しい仲じゃないかいな 空定めなき花曇り
暗きこの身のくり言は 恋に心を奪はれて
お家の大事と聞いたとき 重きこの身の罪科と
かこち涙に目もうるむ
勘平「よくよく思へば後先のわきまえもなく ここ迄は来たれども 主君の大事をよそにして この勘平は
とても生きては居られぬ身の上 其方は言はば女子の事 死後の弔ひ頼むぞや お軽さらばじゃ」
お軽「アレまたその様な事言はしゃんすか 私故にお前の不忠 それがすまぬと死なしゃんしたら
わたしも死ぬるその時は アレ二人心中じゃと 誰がお前を褒めますぞぇ
サぁここの道理を聞き分けて ひとまず私が在所へ来て下さんせ 父さんも母さんも
それはそれは頼もしいお方 もうこうなったが 因果じゃと諦めて
女房の言ふ事も ちっとは聞いて呉れたがよいわいなぁ」
それ其時の うろたえ者には誰がした みんなわたしがこころから
死ぬるその身を長らえて 思ひ直して親里へ 連れて夫婦が身を忍び
野暮な田舎の暮しには 機も織りそろ賃仕事 常の女子と言はれても 取乱したる真実が
やがて届いて山崎の ほんに私がある故に 今のお前の憂き難儀 堪忍してとばかりにて
人目なければ寄り添うて 言葉に色をや含むらん
勘平「成程聞き届けた それ程迄に思うて呉れるそちが親切 ひとまず立ち越え 時節を待ってお詫びせん」
お軽「そんなら聞き届けて下さんすか」
勘平「さぁ仕度しやれ」
お軽「アイ」
身ごしらえするその所へ
伴内「見付けた おぉ お軽も居るな やーやー勘平
うぬが主人の塩谷判官高貞と おらが旦那の師直公と
何か殿中でべっちゃくちゃ くっちゃくちゃと話合するその中に
ちいちゃ刀をちょいと抜いてちょいと斬った科によって
屋敷は閉門網乗物にて エッサッサ エッサッサ エッサエッサエッサッサと
ぼっ帰してしもうた
さあこれ烏(からす)鶉翻(うずらばん)
(さあこれからは うぬが番)
お鴨をこっちへ鳩鷺(はとさぎ)葭切(よしきり)
(お軽(かる鴨)をこっちへ 渡さば良し)
ひわだ雁(がん)だと孔雀が最後
(嫌だ何だとぬかすが最後)
とっ捕めっちゃ ひっ捕めっちゃ
やりゃあしょねえが返答は さっ さっ さっさっ さささささ・・・
勘平返事は丹頂丹頂(たんちょうたんちょう)」
(何と何と)
※セリフは多少の違いがあります。
丹頂丹頂と呼ばわったり
勘平ふふっと吹きいだし
勘平「よい所へ鷺坂伴内 おのれ一羽で食い足らねど 勘平が腕の細ねぶか
料理あんばい 喰うてみよえぇ」
大手を拡げて立ったりける
伴内「えぇ 七面鳥な もちで捕れ」
(しち面倒くさい)
花四天「どっこい」
桜さくらという名に惚れて どっこいやらぬはそりゃ何故に
所詮お手には入らぬが花よ そりゃこそ見たばかり
それでは色にはならぬぞへ 桃か桃かと色香に惚れて
どっこいやらぬはそりゃ何故に 所詮まままにはならぬが風よ
そりゃこそ他愛ない それでは色にはならぬぞ へ
勘平「さぁこうなったらこっちのもの 耳から斬ろか 鼻からそごうか えぇもう一層の事に」
お軽「あ もしっ そいつ殺さばお詫びの邪魔 もうよいわいなぁ」
伴内「へへ もうよいわいなぁ」
口の減らない鷺坂は 腰を抱えてコソコソと 命からがら逃げてゆく
勘平「彼を殺さば 不忠の上に重なる罪科 最早明け方」
お軽「アレ山の端の」
勘平「東がしらむ」
二人「横雲に」
塒をはなれ鳴くからす 可愛い可愛いの女夫づれ
先は急げど心は後へ お家の安否如何ぞと
案じゆくこそォ
幕
2025.3.3現在
落人の解説はこちら(國惠太夫website「落人」)
「神田祭」歌詞 〜片岡仁左衛門 坂東玉三郎 初春特別公演〜大阪松竹座バージョン
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「神田祭」
一歳を今日ぞ祭に当り年 警固手古舞華やかに
飾る桟敷の毛氈も 色に出にけり酒機嫌
神田囃子も勢いよく
祭に対の派手模様 牡丹 釻菊 裏菊の
由縁もちょうど花尽し
祭のなぁ 派手な若い衆が勇みに勇み
身なりを揃えて ヤレ囃せ ソレ囃せ
花山車 手古舞 警固に行列 よんやさ
男伊達じゃの やれこらさ
達引きじゃのと 言うちゃ私に困らせる
色の欲ならこっちでも
常から主の仇な気を 知っていながら女房になって見たいの欲が出て
神や仏を頼まずに 義理もへちまの皮羽織
親分さんのお世話にて 渡りもつけてこれからは
世間構わず人さんの前 はばからず引き寄せて
森の小鴉 我はまた 尾羽をからすの羽さえも
なぞとあいつが得手物の ここが木遣りの家の株
ヤァやんれ引け引け よい声かけてエンヤラサ
やっと抱き締め床の中から 小夜着蒲団をなぐりかけ
何でもこっちを向かしゃんせ
ようい ようい よんやな
良い仲同士の恋諍いなら 痴話と口説は何でもかんでも今夜もせ
オォ東雲の明けの鐘 ごんと鳴るので仲直り済んました
ようい ようい よんやな
そよが締めかけ中網
えんや えんやこれは あれはさのえ(神田祭)
引けや引け引け 引くものにとりては
花に霞よ 子の日の小松 初会の盃 馴染みの煙草盆
お洒落娘の袖たもと 下場の履物
内裏女郎の召し物 座頭のまわし 菖蒲に大根
御神木のしめなわ
又も引くものは色々ござる 湯元細工の剣玉ぶりぶり
そさま故なら心の丈を 示し参らせ候べくの
人形 筆売り この首を 長く出したり縮めたり
なんとのろいじゃあろまいか(申酉)
よいよい よんやな よいよいよんやな
やれよい声 かけろやー(申酉)
ヤァやんれ引け引け よい声かけてエンヤラサ
やっと抱き締め床の中から 小夜着蒲団をなぐりかけ
何でもこっちを向かしゃんせ
ようい ようい よんやな
良い仲同士の恋諍いなら 痴話と口説は何でもかんでも今夜もせ
オォ東雲の明けの鐘 ごんと鳴るので仲直り済んました
ようい ようい よんやな
そよが締めかけ中網
えんや えんやこれは あれはさのえ(神田祭)
幕
2025.1.7現在![]()
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神田祭の解説はこちら(國惠太夫website「神田祭」)
歌詞「落人」~2025年「新春浅草歌舞伎」浅草公会堂バージョン
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「落人」
落人も見るかや野辺に若草の すすき尾花はなけれども
世を忍び路の旅衣 着つつ馴れにし振袖も
どこやら知れる人目をば かくせど色香梅が花
散りてもあとの花のなか いつか故郷へ帰る雁
まだはだ寒き春風に 柳の都 後に見て
気も戸塚はと吉田ばし 墨絵の筆に夜の富士
よそめにそれと影くらき 鳥のねぐらを辿り来る
勘平「鎌倉を出でてようようと ここは戸塚の山中 石高道で足は痛みはせぬかや」
お軽「何の まあそれよりは まだ行先が思はれて」
勘平「そうであろう 昼は人目をはばかる故」
お軽「幸い ここの松かげで」
勘平「暫しがうちの足休め」
お軽「ほんにそれが よかろうわいなぁ」
何もわけ無き うさはらし 憂きが中にも旅の空
初ほととぎす明近く
色で逢いしも昨日今日 かたい屋敷の御奉公
あの奥様のお使いが 二人がえんやの御家来で
その悪縁か白猿に よう似た顔の錦絵の
こんな縁しが唐紙の 鴛鴦(おし)の番(つがい)の楽しみに
泊り泊りの旅籠やで ほんの旅寝の仮枕
嬉しい仲じゃないかいな 空定めなき花曇り
暗きこの身のくり言は 恋に心を奪はれて
お家の大事と聞いたとき 重きこの身の罪科と
かこち涙に目もうるむ
勘平「よくよく思へば後先のわきまえもなく ここ迄は来たれども 主君の大事をよそにして この勘平は
とても生きては居られぬ身の上 其方は言はば女子の事 死後の弔ひ頼むぞや お軽さらばじゃ」
お軽「アレまたその様な事言はしゃんすか 私故にお前の不忠 それがすまぬと死なしゃんしたら
わたしも死ぬるその時は アレ二人心中じゃと 誰がお前を褒めますぞぇ
サぁここの道理を聞き分けて ひとまず私が在所へ来て下さんせ 父さんも母さんも
それはそれは頼もしいお方 もうこうなったが 因果じゃと諦めて
女房の言ふ事も ちっとは聞いて呉れたがよいわいなぁ」
それ其時の うろたえ者には誰がした みんなわたしがこころから
死ぬるその身を長らえて 思ひ直して親里へ 連れて夫婦が身を忍び
野暮な田舎の暮しには 機も織りそろ賃仕事 常の女子と言はれても 取乱したる真実が
やがて届いて山崎の ほんに私がある故に 今のお前の憂き難儀 堪忍してとばかりにて
人目なければ寄り添うて 言葉に色をや含むらん
勘平「成程聞き届けた それ程迄に思うて呉れるそちが親切 ひとまず立ち越え 時節を待ってお詫びせん」
お軽「そんなら聞き届けて下さんすか」
勘平「さぁ仕度しやれ」
お軽「アイ」
身ごしらえするその所へ
伴内「見付けた おぉ お軽も居るな やーやー勘平
うぬが主人の塩谷判官高貞と おらが旦那の師直公と
何か殿中でべっちゃくちゃ くっちゃくちゃと話合するその中に
ちいちゃ刀をちょいと抜いてちょいと斬った科によって
屋敷は閉門網乗物にて エッサッサ エッサッサ エッサエッサエッサッサと
ぼっ帰してしもうた
さあこれ烏(からす)鶉翻(うずらばん)
(さあこれからは うぬが番)
お鴨をこっちへ鳩鷺(はとさぎ)葭切(よしきり)
(お軽(かる鴨)をこっちへ 渡さば良し)
ひわだ雁(がん)だと孔雀が最後
(嫌だ何だとぬかすが最後)
とっ捕めっちゃ ひっ捕めっちゃ
やりゃあしょねえが返答は さっ さっ さっさっ さささささ・・・
勘平返事は丹頂丹頂(たんちょうたんちょう)」
(何と何と)
丹頂丹頂と呼ばわったり
勘平ふふっと吹きいだし
勘平「よい所へ鷺坂伴内 おのれ一羽で食い足らねど 勘平が腕の細ねぶか
料理あんばい 喰うてみよえぇ」
大手を拡げて立ったりける
伴内「えぇ 七面鳥な もちで捕れ」
(しち面倒くさい)
花四天「どっこい」
桜さくらという名に惚れて どっこいやらぬはそりゃ何故に
所詮お手には入らぬが花よ そりゃこそ見たばかり
それでは色にはならぬぞへ 桃か桃かと色香に惚れて
どっこいやらぬはそりゃ何故に 所詮まままにはならぬが風よ
そりゃこそ他愛ない それでは色にはならぬぞ へ
勘平「さぁこうなったらこっちのもの 耳から斬ろか 鼻からそごうか えぇもう一層の事に」
お軽「あ もしっ そいつ殺さばお詫びの邪魔 もうよいわいなぁ」
伴内「へへ もうよいわいなぁ」
口の減らない鷺坂は 腰を抱えてコソコソと 命からがら逃げてゆく
勘平「彼を殺さば 不忠の上に重なる罪科 最早明け方」
お軽「アレ山の端の」
勘平「東がしらむ」
二人「横雲に」
塒をはなれ鳴くからす 可愛い可愛いの女夫づれ
先は急げど心は後へ お家の安否如何ぞと
案じゆくこそォ
幕
2024.12.29現在
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落人の解説はこちら(國惠太夫website「落人」)
こんにちは。くにえです。
「かさね」歌詞 當る巳歳 吉例顔見世興行 京都南座バージョン
歌詞
思いをも 心も人に染めばこそ 恋という顔なつ草の
遅れ先立つ二道を
同じ思ひに後先の わかちしどけも夏紅葉
梢の雨やさめやらぬ 夢の浮世と行きなやむ
男に丁度青日傘 骨になる共何のその
跡を逢ふ瀬の女気に こわい道さへようようと
互いに忍ぶ野辺の草 葉末の露か蛍火も
もし追手かと身づくろひ こころ関屋も後になし
木下川堤に着きにけり
与右衛門「これ累 思ひがけないこの所へ そなたはどうして来やったぞ」
累「どうしてとは胴慾な 一緒に死のうと約束して お前一人 覚悟の書置 ここまで慕うて来た程に 共に殺して下さんせ」
与右衛門「切なる心は尤もなれど そなたの養父は御預りの撫子の茶入紛失故 殿様の御とがめ受け それさへあるに 其方と死んでは親への不孝 思ひあきらめ此処から早う 帰ってたも」
言ふ顔つくづく打まもり
ひょんな縁でこのように
遂こうなった 仲じゃ故
勿体ない事乍ら 去年の初秋うらぼんに
祐念様の御十念 その時ふっと見染めたが
ほんに結ぶの神ならで 仏の庭の新枕
初手から蓮のうてなぞと 心で祝ふ菩提心
後生大事の殿御じゃと
奥の勤めの長つぼね 役者びいきの噂にも
どこやら風が成田屋を
お前によそへて楽しむ心 お年忘れに奥御殿 打交りたる騒ぎ唄
入黒子いれぼくろ 起請誓紙は反古にもなろが 五月六月は満更ほぐにも成りやせまい
唄う辻占今の身に あたりて私が恥かしと
あと言いさして口ごもる
与右衛門「はて 是非に及ばぬ それ程迄に思ひつめたる其方の心 可愛いや共に腹の子まで このまま殺すも世の成行 ふびん の者の心やな」
深き心をしら玉の 露の命をわれ故に
思えばびんなき心やと 手を取交し歎きしが せめて義理ある親達や
生みの親へもよそながら
今宵限りの暇乞ひ 不孝の罪は幾重にも
お許しあれと諸共に 川辺に暫し泣き居たる
不思議や流れに漂ふ髑髏 助が魂魄 錆つく鎌
与右衛門「なに 俗名 助」
累「えぇ アイタ アイタアーー イタ ・ ・ ・」
与右衛門「おぉ さては死霊の」
累「アレー」
捕り手 「与右衛門 御用だ」
暫し争ふ折柄に 風に流るるひと節に
夜や更けて 誠に文は ねやの伽
筆のさや焚く煙りさえ
埓も中洲のしらむ東雲
累「あぁもし お前どこへ行かしゃんすえ」
与右衛門「さぁ わしは やぁそなたの顔は」
累「何 わたしの顔が」
与右衛門「おそろしい」
累「何 恐ろしい 恐ろし いはお前の心 さぁその文 一寸見せて下さんせ」
与右衛門「こ こ の手紙は」
累「見せられまい 見せられまいがなぁ ちぇー お前はなぁ」
それその様によそ他に 深い楽しみあればこそ わしをだまして胴慾な もしやにかかる恋の慾 兎角浮世がままにもならば
帯の矢の字を前垂に 針打やめて落しばら
駒下駄履いて歩いたら まことに誠に嬉しかろ
ならぬ先まで思ふのも 今更身で身が恥しい むごいわいのと取つ いて
変る姿を露知らず 色をふくみし取りなりは 憐れにもまたいぢらしや
与右衛門「道理々々 死ぬると云ふは皆いつわり 国へ帰参の此与右衛門 足手まといとは思へども そなたを連れて これよりすぐに」
累「そんなら一緒に」
与右衛門「さぁ おじゃ」
累「あい」
いそいそ先へたちまちに
邪慳の刃 血汐の紅葉 竜田の川の瀬と変わる
男の裾にしがみつき
累「アーこりゃ わたしをだまして」
与右衛門「おお 殺すのじゃ」
累「ええ」
与右衛門「 仔細と云ふは これを見よ」
鏡にうつせば
累「アレー ヤヤヤヤヤ ・ ・ ・こ、こりゃまあどうして此様に 私の顔の変わりしはぁ」
与右衛門「こりゃ累 因果の道理をよっく聞け 汝がためには実の親 菊が夫の助を殺したその報ひ 廻りめぐりてその顔の 変り果てたも前世の約束 この与右衛門は親の仇 これも因果と さぁあきらめて」
成仏せよと無二無三
打ってかかれば身をかはし
のう情けなや うらめしや
身は煩悩のきづなにて 恋路に迷ひ親おやの
仇なる人と知らずして 恪気嫉妬のくどき言
我と我身に惚れ過ぎし 心の内のおもてなや
つらき心は先の世の 如何なる恨みか忌しと
口説いつ泣いつ 身をかきむしり
人の報ひのあるものか 無きものか
思ひ知れやとすっくと立ち 振乱したる黒髪は
此世からなる鬼女の有様
つかみかかれば与右衛門も 鎌取直して土橋の上
襟髪つかんで ひとえぐり 情容赦も夏の霜 消ゆる姿の八重撫子
これや累の名なるべし 後に伝えし物語
恐ろしかりける
終
2024.12.3編集
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「かさね」の解説はこちら(國惠太夫WEB Site)
「素踊り 吉野山」歌詞 ~新翔春秋会~ 市川團子、挑む。
京都芸術劇場・春秋座 (京都芸術大学内)
ご観劇のお供に是非ご活用下さいませ!
※本公演は清元のみの演奏になります。
「吉野山」
恋と忠義はいずれが重い 掛けて思いは計りなや
静に忍ぶ旅立ちや
宇賀の御霊の御社はいと尊くもこうこうと かすみの中にみかの原
わきて形見の鼓の可愛い 可愛い可愛いの睦言も
人には包むふくさもの それを頼りにつく杖の
心ぼそ野をうち過ぎて
谷の鶯 初音のつづみ はつねの鼓
調あやなす音に連れて つれて真似草 音に連れて
遅ればせなる忠信が 吾妻からげの旅姿
背に風呂敷 しかと背負たらおうて 野道あぜ道ゆらりゆらり
軽いとりなりいそいそと 目立たぬように道隔て
静 「おぉ忠信殿 待ちかねましたわいな」
忠信「これはこれは静様 女中の足と侮って思わぬ遅参 まっぴら御免くださりましょう」
静 「ここは名に負う吉野山 四方の梢もいろいろに」
忠信「春立つと 云うばかりにや三吉野の」
静 「山も霞みて」
忠信「今朝は」
両人「見ゆらん」
見渡せば 四方の梢もほころびて
梅が枝唄う歌姫の 里の男子が声々に
我が夫が天井ぬけて据える 昼の枕はつがもなや
天井ぬけて据える膳 昼の枕はつがもなや
可笑し烏の一節に
徳若にご万歳とは 君も栄えてましんます
愛嬌ありける柳ごし よい中村のやぐら幕
櫓太鼓のにぎにぎと 商い神の若えびす
繁盛まします その御徳に 御田の稲には穂に穂を栄え
宝御船萬石舟 色の実入りに今年綿
誠に目出度う さむらいける
やしょめやしょめ 京の町のやしょめ
売ったるものは何々 はまぐり はまぐり
蛤 はまぐり はまぐり
はまぐり見さいなと売ったるものは何々
はまぐり早き貝合わせ
弥生は雛の妹背中 女雛男雛と並べておいて
眺めに飽かぬ三日月の 宵に寝よとは きぬぎぬに
急かれまいぞと恋の欲 桜は酒が過ぎたやら
桃にひぞりて後ろ向き 羨ましうは ないかいな
はや東雲のほととぎす 京ぞ皐月の花あやめ
賀茂のあおいに藤の花 世々の試しの比べ馬
はいはい はいはいはい
そもそも馬に七ケの秘所 三ケの手綱 五ケの鞍
真っ先かけて乗り出だす あっぱれ見事や派手らしや
忠信「せめては憂さを 幸い 幸い」
姓名添えて賜わりし 御着せ長を取り出だし
君と敬い奉る しずかは鼓を御顔と よそえて上に置きの石
人こそ知らね西国へ 御下向の御海上 波風荒く御船を
住吉浦に吹き上げられ それより吉野にまします由
やがてぞ参り候らはんと 互いに形見を取り納め
実にこの鎧を賜わっしも 兄継信が忠勤なり
静 「なに継信が 忠勤とや」
誠にそれよ 来し方を
思いぞ出る壇ノ浦の
忠信「海に兵船 平家の赤旗 陸(くが)に白旗」
源氏の強者 あら物々しやと夕日影 長刀引きそばめ
何某は平家の侍 悪七兵衛景清と名乗りかけ
薙ぎ立て薙ぎ立て 薙ぎ立つれば
花に嵐のちりちりぱっと 木の葉武者
言い甲斐なしとや方々よ 三保谷の四郎これにありと
渚にちょうと打ってかかる 刀を払ろう長刀の えなれぬ振る舞い いづれとも
勝り劣りは波の音 打ち合う太刀の鍔元(つばもと)より 折れて引く潮 帰る雁
勝負の花と見すつるかと 長刀小脇にかい込んで 兜の錣(しころ)を引っ掴み
後へ引く足 たじたじたじ 向こうへ行く足 よろよろよろ
むんずと錣をひっ切って 双方尻江に どっかと座す
腕の強さと言いければ 首の骨こそ強けれと
ムフフフフフ ダハハハハハ
笑いし後は入り乱れ 手しげき働き兄継信
君の御馬の矢面に 駒を駆け据え立ち塞がる
静 「おぉ聞き及ぶその時に 平家の方にも 名高き強弓」
能登守
静 「教経と」
名乗りも和えず よっ引いて 放つ矢先は恨めしや
兄継信が胸板に たまりもあえず真っ逆さま 敢え無き最後は武士の
忠臣義士の名を残す 思い出ずるも涙にて 袖は乾かぬ筒井筒
いつか御身も伸びやかに 春の柳生の いと長く
枝を連ぬる御契り などかは朽ちしかるべきと
互いに諫め いさめられ 急ぐとすれど はかどらぬ 芦原峠 鴻の里
雲と見紛う三吉野の 麓の里にぞ
幕
2024.9.3現在
「流星」歌詞~信州松本大歌舞伎~
まつもと市民芸術館・主ホール バージョン
ご観劇のお供に是非ご活用下さいませ!
※流星は一人の立ち方が「父雷」「母雷」「子雷」「婆雷」を瞬時で踊り分けます。今回は役柄によって歌詞の色を変えてみました。
「父雷」「母雷」「子雷」「婆雷」
「流星」
それ銀漢と唐詞に つらぬる五言七言の
硬い言葉を柔らぐる 三十一文字の大和歌
天の河原にかわらじと 深くも願う夫婦星
その逢瀬さえ一年(ひととせ)に 今宵一夜の契り故
まだ明星の影薄き 暮れぬうちより織女が
待てば待たるる牽牛も 牛の歩みのもどかしく
心は先へ行き合いの 八重の雲路を辿り来る
それと見るよりかさ鷺の 飛立つ想い押し鎮め
織女「おなつかしや我がつま様 おかわりとてもあらざりしか」
牽牛「おもえば年にただ一度 この七夕に逢うのみにて」
織女「かりの便りもなき身の上」
牽牛「なつかしきは いかばかり」
織女「とりわけ去年は雨降りて」
牽牛「そもじに逢うも三年越し」
しかも続きし長雨に 八十の河原に水増して
妻こし船に棹させど とわたるよすが明け近く
長鳴き鳥に短夜を 思えば牛と引く綱も
あとへ引かるる後朝(きぬぎぬ)に
つれなき別れも昨日と過ぎ
今日は雨気もなか空に 心も晴れて雲の帯び
解けて寝る夜の嬉しさと 寄り添う折から闇雲に
丸い世界へ生まれしからは
恋をするのが特鼻褌(とくびこん)
寝るに手まわし宵から裸
ぞっと夜風にハッハッハッ ハックサメ
彼奴が噂をしているか エエ畜生めと夕闇を
足も空にて駆け来たり
流星「ご注進 ご注進」
牽牛「誰かと思えば そちゃ流星」
織女「注進とは何事なるか」
牽牛「様子はいかに」
流星「ハハーッ」
さらば候そろそろと 三つ合わせてさん候
およそ夜這いと化け物は 夜中のものに宵の内
とろとろやろうと思いのほか 一つ長屋の雷が
夫婦喧嘩の乱騒ぎ
聞けばこの夏流行の 端唄の師匠へ落っこちて
気は失なわねど肝心の 雲を失い居候
聞く女房は呆れ果て
マッコレそんなのろけた鳴りようでは
恐がるお臍で茶を沸かそう 鳴るなら大きな声をして
ゴロゴロゴロ ピカピカピカ ゴロゴロゴロ ピカピカピカ
ゴロゴロ ゴロゴロ ゴロゴロゴロゴロ
ゴロゴロ・・・・・ピシャリっと
鳴らねばさまを付けられぬ と言えば
亭主は腹を立て それは昔の雷だ
大きな声で鳴らずとも 粋に端唄で鳴るのが当世
それがいやなら
父雷「出て行きゃれ」
母雷「なに出て行けとのォ」
父雷「オオサッ 角を見るのも アァ厭になった」
我がものと思えば軽ろし傘の雪
我がもの故に仕方なく 我慢をすりゃあつけ上がり
亭主を尻に引きずり女房 サア恋の重荷の子供を連れ
きりきりと出て行きゃれ
いえいえここは私の家
お前は婿の小糠雨 傘一本もない身の上
汝そうぬかせば了簡がと 打ってかかるを
ゴロゴロゴロ
ゴロゴロゴロと鳴る音に
傍に寝ていた小雷 コヨコヨコヨと起き上がり
コレ父さん可哀想に母さんを
背負った太鼓じゃあるまいし
何でそのようにたたくのじゃ
堪忍してとコヨコヨコヨ
かかる騒ぎに隣りから
婆雷が止めに来て
婆雷「マママこれ」
お前方はどうしたのじゃ 夫婦喧嘩は雷獣も
喰わぬに野暮を夕立は どんな太鼓の八つ当たり
出て行との一声は
月が鳴いたか時鳥 いつしか白む短夜に まだ寝もやらぬ手枕や
アレおなるさんもくよくよと
愚痴なようだが コレマ泣いているわいな
端唄に免じて五郎介どの 了簡してとゴロゴロゴロ
いえいえ私しゃ 打たれたからは
了簡ならぬとゴロゴロゴロ
ならずば汝とゴロゴロゴロ
父さん待ってコヨコヨコヨ
これはしたりとゴロゴロゴロ
止めるはずみに雷婆 ウーンとばかりに倒るれば
こりゃころりではあるまいか
医者よ針医と立ち騒げば
入れ歯の牙を飲み込んで 胸につかえて苦しやと
言うにおかしく仲直り
どこもかしこも大騒ぎ 名残りを惜しむかこち言
雲に掛け橋 流星は 口舌はささらさらりっと
西へ飛ぼうか 東へ飛ぼか とちらへ行こうぞ思案橋
月の出汐に辺りは黒幕天の川
見えるは二人の鵲(かささぎ)の
雲の谷間の勢ぞろォォォい (清元「船」替え歌)
夫婦喧嘩のあらましは
かくの通りと褌(ふんどし)で 汗を拭うて至りける
「流星」歌詞~歌舞伎町歌舞伎~
シアターミラノ座バージョン
ご観劇のお供に是非ご活用下さいませ!
※流星は一人の立ち方が「父雷」「母雷」「子雷」「婆雷」を瞬時で踊り分けます。今回は役柄によって歌詞の色を変えてみました。
「父雷」「母雷」「子雷」「婆雷」
「流星」
それ銀漢と唐詞に つらぬる五言七言の
硬い言葉を柔らぐる 三十一文字の大和歌
天の河原にかわらじと 深くも願う夫婦星
その逢瀬さえ一年(ひととせ)に 今宵一夜の契り故
まだ明星の影薄き 暮れぬうちより織女が
待てば待たるる牽牛も 牛の歩みのもどかしく
心は先へ行き合いの 八重の雲路を辿り来る
それと見るよりかさ鷺の 飛立つ想い押し鎮め
織女「おなつかしや我がつま様 おかわりとてもあらざりしか」
牽牛「おもえば年にただ一度 この七夕に逢うのみにて」
織女「かりの便りもなき身の上」
牽牛「なつかしきは いかばかり」
織女「とりわけ去年は雨降りて」
牽牛「そもじに逢うも三年越し」
しかも続きし長雨に 八十の河原に水増して
妻こし船に棹させど とわたるよすが明け近く
長鳴き鳥に短夜を 思えば牛と引く綱も
あとへ引かるる後朝(きぬぎぬ)に
つれなき別れも昨日と過ぎ
今日は雨気もなか空に 心も晴れて雲の帯び
解けて寝る夜の嬉しさと 寄り添う折から闇雲に
丸い世界へ生まれしからは
恋をするのが特鼻褌(とくびこん)
寝るに手まわし宵から裸
ぞっと夜風にハッハッハッ ハックサメ
彼奴が噂をしているか エエ畜生めと夕闇を
足も空にて駆け来たり
流星「ご注進 ご注進」
牽牛「誰かと思えば そちゃ流星」
織女「注進とは何事なるか」
牽牛「様子はいかに」
流星「ハハーッ」
さらば候そろそろと 三つ合わせてさん候
およそ夜這いと化け物は 夜中のものに宵の内
とろとろやろうと思いのほか 一つ長屋の雷が
夫婦喧嘩の乱騒ぎ
聞けばこの夏流行の 端唄の師匠へ落っこちて
気は失なわねど肝心の 雲を失い居候
聞く女房は呆れ果て
マッコレそんなのろけた鳴りようでは
恐がるお臍で茶を沸かそう 鳴るなら大きな声をして
ゴロゴロゴロ ピカピカピカ ゴロゴロゴロ ピカピカピカ
ゴロゴロ ゴロゴロ ゴロゴロゴロゴロ
ゴロゴロ・・・・・ピシャリっと
鳴らねばさまを付けられぬ と言えば
亭主は腹を立て それは昔の雷だ
大きな声で鳴らずとも 粋に端唄で鳴るのが当世
それがいやなら
父雷「出て行きゃれ」
母雷「なに出て行けとのォ」
父雷「オオサッ 角を見るのも アァ厭になった」
我がものと思えば軽ろし傘の雪
我がもの故に仕方なく 我慢をすりゃあつけ上がり
亭主を尻に引きずり女房 サア恋の重荷の子供を連れ
きりきりと出て行きゃれ
いえいえここは私の家
お前は婿の小糠雨 傘一本もない身の上
汝そうぬかせば了簡がと 打ってかかるを
ゴロゴロゴロ
ゴロゴロゴロと鳴る音に
傍に寝ていた小雷 コヨコヨコヨと起き上がり
コレ父さん可哀想に母さんを
背負った太鼓じゃあるまいし
何でそのようにたたくのじゃ
堪忍してとコヨコヨコヨ
かかる騒ぎに隣りから
婆雷が止めに来て
婆雷「マママこれ」
お前方はどうしたのじゃ 夫婦喧嘩は雷獣も
喰わぬに野暮を夕立は どんな太鼓の八つ当たり
出て行との一声は
月が鳴いたか時鳥 いつしか白む短夜に まだ寝もやらぬ手枕や
アレおなるさんもくよくよと
愚痴なようだが コレマ泣いているわいな
端唄に免じて五郎介どの 了簡してとゴロゴロゴロ
いえいえ私しゃ 打たれたからは
了簡ならぬとゴロゴロゴロ
ならずば汝とゴロゴロゴロ
父さん待ってコヨコヨコヨ
これはしたりとゴロゴロゴロ
止めるはずみに雷婆 ウーンとばかりに倒るれば
こりゃころりではあるまいか
医者よ針医と立ち騒げば
入れ歯の牙を飲み込んで 胸につかえて苦しやと
言うにおかしく仲直り
どこもかしこも大騒ぎ 名残りを惜しむかこち言
雲に掛け橋 流星は 口舌はささらさらりっと
西へ飛ぼうか 東へ飛ぼか とちらへ行こうぞ思案橋
月の出汐に辺りは黒幕天の川
見えるは二人の鵲(かささぎ)の
雲の谷間の勢ぞろォォォい (清元「船」替え歌)
夫婦喧嘩のあらましは
かくの通りと褌(ふんどし)で 汗を拭うて至りける
「神田祭」歌詞 ~四月大歌舞伎〜歌舞伎座バージョン
ご観劇のお供に是非ご活用下さいませ!
「神田祭」
一歳を今日ぞ祭に当り年 警固手古舞華やかに
飾る桟敷の毛氈も 色に出にけり酒機嫌
神田囃子も勢いよく
祭に対の派手模様 牡丹 釻菊 裏菊の
由縁もちょうど花尽し
祭のなぁ 派手な若い衆が勇みに勇み
身なりを揃えて ヤレ囃せ ソレ囃せ
花山車 手古舞 警固に行列 よんやさ
男伊達じゃの やれこらさ
達引きじゃのと 言うちゃ私に困らせる
色の欲ならこっちでも
常から主の仇な気を 知っていながら女房になって見たいの欲が出て
神や仏を頼まずに 義理もへちまの皮羽織
親分さんのお世話にて 渡りもつけてこれからは
世間構わず人さんの前 はばからず引き寄せて
森の小鴉我はまた 尾羽をからすの羽さえも
なぞとあいつが得手物の ここが木遣りの家の株
ヤァやんれ引け引け よい声かけてエンヤラサ
やっと抱き締め床の中から 小夜着蒲団をなぐりかけ
何でもこっちを向かしゃんせ
ようい ようい よんやな
良い仲同士の恋諍いなら 痴話と口説は何でもかんでも今夜もせ
オォ東雲の明けの鐘 ごんと鳴るので仲直り済んました
ようい ようい よんやな
そよが締めかけ中網
えんや えんやこれは あれはさのえ(神田祭)
引けや引け引け 引くものにとりては
花に霞よ 子の日の小松 初会の盃 馴染みの煙草盆
お洒落娘の袖たもと 下場の履物
内裏女郎の召し物 座頭のまわし 菖蒲に大根
御神木のしめなわ
又も引くものは色々ござる 湯元細工の剣玉ぶりぶり
そさま故なら心の丈を 示し参らせ候べくの
人形 筆売り この首を 長く出したり縮めたり
なんとのろいじゃあろまいか(申酉)
よいよい よんやな よいよいよんやな
やれよい声 かけろやー(申酉)
ヤァやんれ引け引け よい声かけてエンヤラサ
やっと抱き締め床の中から 小夜着蒲団をなぐりかけ
何でもこっちを向かしゃんせ
ようい ようい よんやな
良い仲同士の恋諍いなら 痴話と口説は何でもかんでも今夜もせ
オォ東雲の明けの鐘 ごんと鳴るので仲直り済んました
ようい ようい よんやな
そよが締めかけ中網
えんや えんやこれは あれはさのえ(神田祭)
幕
2024.3.31現在
「喜撰」歌詞 2024年 三月大歌舞伎バージョン
長唄・清元 掛け合い
※長唄=赤
我庵は芝居の辰巳常盤町 しかも浮世を離れ里
世辞で丸めて浮気でこねて 小町桜の眺めに飽かぬ
彼奴にうっかり眉毛を読まれ
法師法師はきつつきの 素見ぞめきで帰らりょうか
わしは瓢箪浮く身じゃけれど
主は鯰のとり所 ぬらりくらりと今日もまた
浮かれ浮かれて来りける
もしやと御簾を余所ながら 喜撰の花香茶の給仕
波立つ胸を押し撫でて しまりなけれど鉢巻も
幾度しめて水馴れ掉
濡れて見たさと手を取って 小野の夕立縁の時雨
化粧の窓に手を組んで どう見直して胴振るい
今日の御見の初昔 悪性と聞いて此胸が
朧の月や松の影
わたしゃお前の政所 何時か果報も一森と
褒められたさの身の願い
惚れ過ぎる程愚痴な気に
心の底の知れ兼ねて
じれったいでは ないかいな
何故惚れさしたコレ姉ェ
うぬぼれ過ぎた悪洒落な
賤が伏屋に糸取るよりも 主の心がそれそれ取りにくい エェさりとは
機嫌気づまも不断から 酔うたお客の扱いは
見馴れ聞き馴れ目顔で悟る 粋を通した其あとは コレひぞり言
粋と云はれて浮いた同士
ヤレェェ色の世界に出家を遂げェェる
ヤレヤレヤレヤレ細かにちょぼくれ
愚僧が住家は京の辰巳 世を宇治山とや人は云ふなり
ちゃちゃくちゃ茶園の 咄す濃い茶の緑の橋姫
夕べの口舌の袖の移香 花橘の小島が崎より
一散走りに走って戻れば 内の嬶が恪気の角文字
牛も涎を流るる川瀬の 内へ戻って我から焦がる
蛍を集め手管の学問
唐も日本も里の恋路か 山吹流しの水に照り添ふ
朝日のお山に誰でも彼でも 二世の契りは平等院とや
さりとは是はうるせぇこんだに
奇妙頂礼ど如らァァァい
ここに極まる楽しさよ
(坊主大勢出)
住吉の岸辺の茶屋に腰打ちかけて ヨイヤサ コレハイナ
松でェ釣ろやれェェェ蛤ィを 逢ふて嬉しきヤンレ夏の月
ヤットコセ ヨイヤナ アリャリャ これわいなぁ このなんでもせえ
難波江の片葉の芦の結ぼれかかり ヨイヤサ コレワイナ
解けてェほぐれてェェェ逢ふことォも
待つに甲斐あるヤンレ夏の雨
ヤットコセ ヨイヤナ アリャリャ これわいなぁ このなんでもせえ
姉さんおん所かえ 島田金谷は川の間 旅籠はいつもお定まり
お泊りならば泊らんせ お風呂もどんどん沸いている
障子もこの頃張替えた 畳もこの頃かえてある
お寝間のお伽も負けにして
草鞋の紐に仇どけの 結んだ縁の一夜妻
あんまり憎うも あるまいか
てもそうだろ そうだろ そうであろ
住吉様の岸の姫松 めでたさよ
いさめの御祈祷 清めの御祈祷 天下泰平国土安穏 目出度さよ
来世は生を黒牡丹 己のが庵 へ帰り行く 我が里さしてぞ
2024.2.29 現在
2024.3.3 修正
喜撰の解説はこちら
國惠太夫 Website「喜撰」解説
「吉野山」歌詞
二月御園座大歌舞伎~十三代目市川團十郎白猿襲名披露 八代目市川新之助初舞台~バージョン
※赤=竹本連中
恋と忠義はいずれが重い 掛けて思いは計りなや
静に忍ぶ旅立ちや
馴れぬ茂みのまがい道 弓手(ゆんで)も馬手(めて)も若草を
分けつつ行けば あさる雉子(きぎす)のぱっとたっては
ほろろ けんけん ほろろうつ
なれは子ゆえに身を焦がす 我は恋路に迷う身の
ああ羨まし 妬ましや
谷の鶯 初音のつづみ はつねの鼓
調あやなす音に連れて つれて真似草 音に連れて
遅ればせなる忠信が 吾妻からげの旅姿
背に風呂敷 しかと背負たらおうて 野道あぜ道ゆらりゆらり
軽いとりなりいそいそと 目立たぬように道隔て
静 「おぉ忠信殿 待ちかねましたわいな」
忠信「これはこれは静様 女中の足と侮って思わぬ遅参 まっぴら御免くださりましょう」
静 「ここは名に負う吉野山 四方の梢もいろいろに」
忠信「春立つと 云うばかりにや三吉野の」
静 「山も霞みて」
忠信「今朝は」
両人「見ゆらん」
見渡せば 四方の梢もほころびて
梅が枝唄う歌姫の 里の男子が声々に
我が夫が天井ぬけて据える 昼の枕はつがもなや
可笑し烏の一節に
弥生は雛の妹背中 女雛男雛と並べておいて
眺めに飽かぬ三日月の 宵に寝よとは きぬぎぬに
急かれまいぞと恋の欲 桜は酒が過ぎたやら
桃にひぞりて後ろ向き 羨ましうは ないかいな
忠信「せめては憂さを 幸い 幸い」
姓名添えて賜わりし 御着せ長を取り出だし
君と敬い奉る しずかは鼓を御顔と よそえて上に置きの石
人こそ知らね西国へ 御下向の御海上 波風荒く御船を
住吉浦に吹き上げられ それより吉野にまします由
やがてぞ参り候らはんと 互いに形見を取り納め
実にこの鎧を賜わっしも 兄継信が忠勤なり
静 「なに継信が 忠勤とや」
誠にそれよ 来し方を
思いぞ出る壇ノ浦の
忠信「海に兵船 平家の赤旗 陸(くが)に白旗」
源氏の強者 あら物々しやと夕日影 長刀引きそばめ
何某は平家の侍 悪七兵衛景清と名乗りかけ
薙ぎ立て薙ぎ立て 薙ぎ立つれば
花に嵐のちりちりぱっと 木の葉武者
言い甲斐なしとや方々よ 三保谷の四郎これにありと
渚にちょうと打ってかかる 刀を払ろう長刀の えなれぬ振る舞い いづれとも
勝り劣りは波の音 打ち合う太刀の鍔元(つばもと)より 折れて引く潮 帰る雁
勝負の花と見すつるかと 長刀小脇にかい込んで 兜の錣(しころ)を引っ掴み
後へ引く足 たじたじたじ 向こうへ行く足 よろよろよろ
むんずと錣をひっ切って 双方尻江に どっかと座す
腕の強さと言いければ
首の骨こそ強けれと
ムフフフフフ ダハハハハハ
笑いし後は入り乱れ 手しげき働き兄継信
君の御馬の矢面に 駒を駆け据え立ち塞がる
静 「おぉ聞き及ぶその時に 平家の方にも 名高き強弓」
能登守
静 「教経と」
名乗りも和えず よっ引いて 放つ矢先は恨めしや
兄継信が胸板に たまりもあえず真っ逆さま 敢え無き最後は武士の
忠臣義士の名を残す 思い出ずるも涙にて 袖は乾かぬ筒井筒
掛かるところへ早見の藤太 家来引き連れ立ち至る
※早見の藤太・家来 セリフ (舞台でお楽しみに!)※
禰宜が鼓に鈴振る手元 ちょっと鳥居を ありゃありゃしてこい
飛び越え狐 愛嬌も 宇賀の御霊は玉姫稲荷
妻恋 染めて嫁入りして
そこらでしめたぞ天日照り
堅い契りのお岩様 四ツ谷でお顔を三巡りに
好いたらしいと思うたる 縁に引かれて車咲き
ちょっとおさえた強力の
袖すり抜けてどっこいな
えぇもうしつこい そこいらで
翁稲荷か とうとうたらり 喜びありや烏森
いつか御身も伸びやかに 春の柳生の いと長く
枝を連ぬる御契り などかは朽ちしかるべきと
互いに諫め いさめられ 急ぐとすれど はかどらぬ 芦原峠 鴻の里
雲と見紛う三吉野の
麓の里にぞ
2024.1.29 現在
吉野山の解説はこちら
國惠太夫Web site 「吉野山」解説