鳥さし(とりさし)

作詞

三枡屋二三治

作曲

初世清元齋兵衛

初演

1831年(天保2年)8月 江戸市村座

本名題

祇園町一力の段(ぎおんまちいちりきのだん)

参考資料

清元集 清元全集 清元五十番

解説

「鳥さし」とも「鳥刺し」とも書きます。

1748年(寛延元年)初演の「仮名手本忠臣蔵」の爆発的人気を背景に1767年(明和4年)に「太平記忠臣講釈」が歌舞伎で初演されました。その七段目「祇園町一力の段」で一力茶屋で塩冶縫之助が遊興し、太鼓持ちの岸野次郎左衛門が劇中で鳥刺しの格好に扮して踊ったものが初演と伝わっています。
現在では一つの演目として上演されるのみとなりました。

鳥さしとは、細い竹の先端に鳥餅を付けて小鳥などを引っかけて捕らえる職業で大正頃まで見かけた職業の事です。

曲冒頭の「さすぞぇさすは盃~」は
鳥さしの刺す→盃を注す→初会の客(遊郭などで初めてのお客に盃を交わすしきたり)
と、鳥さしと一力茶屋を関連付けた歌詞になっています。
その他各所に「鳥」との洒落を盛り込んだ文句に軽妙な曲付けになっております。

歌詞

さすぞぇさすは盃 初会の客よ
手にはとれども初心顔

さいてくりょ さいてくりょ
これ物にかんまえて まっこれ物にかんまえて
ちょっとさいてくりょうか さいたら子供に羽根やろな
ひわや小雀や四十雀 瑠璃は見事な錦鳥
こいつは妙々 奇妙鳥類何んでもござれ
念仏はそばで禁物と 目当違わぬ稲むらを
狙いの的とためつすがめつ
いでや手並を一と差しと 一散走りに向うを見て
きょろつき眼をあちこちと 鳥さし掉も其儘に
手足延して捕らんとすれば 鳥はどこへか随徳寺
思案途方に立ち止まり
したりところてんではなけども 突出されても自分もの
是じゃ行かぬと捨鉢に 跡はどうなれ弾く三味線の
気も二上りか三下り 浮いて来た来た来たさの
酒の酔い心

四条五条の夕涼み 芸妓たいこを引連れて
上から下へ幾度も ゆたかな客の朝帰り カァカァカァ
鴉鳴きさえェェ うまい奴めと
なぶりおかめから そこらの目白が
見つけたらさぞ 鶺鴒であろうのに

日がらひばりの約束は いつも葭切顔鳥見たさ
文にもくどう駒鳥の そのかえす書きかえり事
なぞと口説きで仕かけたら 堪った色ではないかいな
其時あいつが口癖に 都々逸文句も古めいた

晩に忍べと云うた故 紺の手拭で顔隠し
いつも合図の咳払い ハックサメ
噂されたを評判に 幸いありや有難き

実に御ひいきの時を得て 座敷の興も面白き
息せき楽屋へ走り行く

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