魂まつり(たままつり)

作詞

九条武子

作曲

清元榮寿郎

初演

1928年(昭和3年)1月末 江戸市村座 (研究会・七曜座)

本名題

無し

参考資料

歌舞伎座筋書(S.35 S.42 S.56 R.6)

解説

この曲は1928年(昭和3年)1月末、江戸市村座で六代目尾上菊五郎門下の尾上茂げる(のち西川鯉三郎)、尾上琴次郎(のち初代尾上菊之丞)、尾上菊枝らの研究会「七曜座」で「四季」の「夏」の場面で初演されました。

「四季」

春・紙雛(長唄)
夏・魂まつり(清元)
秋・砧(筝曲)
冬・木枯し(長唄)

歌舞伎興行では1943年(昭和18年)4月、歌舞伎座「恒例團菊祭」に於いて六代目尾上菊五郎(全四場面)、十五代目市村羽左衛門(春夏二場面)らの出演で初上演されました。
興行では初演時の全曲に加え、「春」と「夏」の間、「秋」と「冬」の間、最後部分に岡鬼太郎作の小曲が追加されています。

「四季」

春・紙雛(長唄)
 ももやなぎ(屏前の桃)
夏・魂まつり(清元)
秋・砧(筝曲)
 ももやなぎ(橋畔の柳)
冬・木枯し(長唄)
 小曲・ももやなぎ


「魂まつり」は場面から「大文字」と呼ばれる場合もあります。
京都の夏、若衆と舞妓が如意ヶ嶽に燃える大文字の送り火を仰ぎ見ながら幼かった頃に慕い合った日々をしのび、無常観に打ちひしがれます。そこへ里の子供たちが童歌を唄いながら無心にじゃれ合ってくるという内容です。


作の九条武子氏は「四季」を人間の一生の象徴を主題にしたと伝わります。
「春」は芽生え、「夏」は青年、「秋」は円熟、「冬」は終焉。
1928年(昭和3年)1月末の「七曜座」では病床にあり、その数日後の2月7日に42歳の生涯を閉じました。「四季」は九条武子氏の遺作となりました。

作曲の清元榮寿郎師は数多くの作品を遺されましたが、この「魂まつり」が一番最初に作った曲と伝わります。

歌詞

打ち水に心すがしき夕まぐれ 涼みの床のぼんぼりも
人待ち顔にちらほらと 帆影を流す鴨川や
三条四条の橋の上を 降り分け髪も筒井筒
肩すぎ越して七年八年 逢はでも夏は早や過ぎぬ
三十六方暮れ果てて 打ち出す鐘は魂まつり

諸行無常是生滅法 哀別離苦の響きにも
やるかた知らぬ胸の火は 見ぬ世は辛し人恋し
山の女も如意ヶ嶽 そのふところに赤々と
無明を照らす大文字

とーぼった灯った大文字 一番先に灯った
北にも西にも灯った 月も今宵は遠慮がち
星も今宵は寝て候 父さん母さん逢いに来る
道は暗かろ夜明けまで 山の送り火燃えてくれ

動画