こんにちは。くにえです。
11月博多座「市川海老蔵特別公演」昼の部「流星」の歌詞&プチ解説を書きました。
※夜の部「お祭り」解説はこちらです。
※市川海老蔵公演の記事はこちらです。
浄瑠璃を耳だけでとらえるのはなかなか難しい箇所もございます。
7~8分で読んでいただけると思います。
歌詞をサクッとお読みいただくだけで舞台をより一層楽しんで頂けると思います!
是非ともこちらをご活用くださいませ\( 'ω')/
流 星
解 説
本名題を「日月星晝夜織分(にちげつせいちゅうやのおりわけ)」といいます。
作詞は河竹新七(のちの河竹黙阿弥)作曲は清元順三で、1859年(安政6年)に江戸市村座で初演されました。ちなみにこの年はあの有名な大老井伊直弼が「安政の大獄」に踏み切り、徳川慶喜を始めとする多くの学者や各藩の有力な人物が処分を下された年です。
歴史の勉強などをすると何とも暗い世の中だったイメージですが、庶民の暮らしは相変わらず芝居を楽しんだりと普通の生活を送っていたことも想像できますね( ´艸`)
開曲当初は通称を「夜這星(よばいぼし)」と呼んでいましたが、時代と共に風紀を害するということで五世延寿太夫が「流星(りゅうせい)」と変更しました。
舞台は七夕の夜に牽牛(けんぎゅう)【彦星のこと】と織女(しょくじょ)【織姫のこと】が年に一度の逢瀬を楽しんでいるところに、流星が天上界に自分の身の回りで起きた事を注進するところから始まります。
牽牛織女に流星が話す内容とは、自分の隣に住む雷夫婦の喧嘩のことでした。
ある日、父雷が雲から落っこちてしまい、端唄の師匠のところに居候します。居候中に聞いて
覚えた端唄混じりの雷を天上界に戻っても、つい鳴らしてしまいます。
その様子に呆れはてた母雷と夫婦喧嘩になってしまうのです。
子雷や隣の婆雷が仲裁に入りますが、いっこうに収まりません。
はたして夫婦喧嘩の結末はどうなったのでしょうか?
歌詞の中に当時流行歌だった「端唄」や伝染病として蔓延した「コロリ(これら)」など、
当時の世相がよく反映された傑作です。
また「丸い世界」という歌詞も出ます。当時から既に世界は丸いという知識が当たり前だったようですね!
そしてキーワード「夫婦喧嘩」。
これもいつの時代も変わらず・・・(笑)
一人の立ち方が「父雷」「母雷」「子雷」「婆雷」を瞬時で踊り分けます。
見どころ満載、ユーモラスたっぷりの舞台を是非ご覧ください!(*^▽^*)
実は2009年12月に流星の清元の演奏のみの動画をYoutubeにアップしております。
今回の舞台とは曲の構成が違いますがお聞きくだされば幸いです。
國惠太夫blog「清元「流星」について」にYoutubeのリンクがございます(∩´∀`)∩
歌 詞
※今回は役柄によって歌詞の色を変えてみました。
「父雷」「母雷」「子雷」「婆雷」
それ銀漢と唐詞に 連ぬる五言七言の
かたい言葉を柔らぐる 深くも願う夫婦星
流星「御注進 御注進」
呼ばわる声も高島や 飛んで気軽な流星が
丸い世界へ生まれしからは 恋をするのが特鼻褌(とくびこん)
寝るに手まわし宵から裸 ぞっと夜風にハッハッハッ ハックサメ
彼奴が噂をしているか エエ畜生めと夕闇を 足も空にて駆け来たり
牽牛「様子はいかに」
流星「ハハーッ さらば候そろそろと 三つ合わせてさん候」
およそ夜這いと化け物は 夜中のものに宵の内
とろとろやろうと思いのほか 一つ長屋の雷が 夫婦喧嘩の乱騒ぎ
聞けばこの夏流行の 端唄の師匠へ落っこちて
気は失なわねど肝心の 雲を失い居候
そこで端唄を聞き覚え この天上へ帰っても つい口癖になるときも
ごろごろごろごろごろごろ エエごろごろごろ
聞く女房は呆れ果て マッコレそんなのろけた鳴りようでは
恐がるお臍で茶を沸かそう 鳴るなら大きな声をして
ゴロゴロゴロ ピカピカピカ ゴロゴロゴロ ピカピカピカ
ゴロゴロ ゴロゴロ ゴロゴロゴロゴロ ゴロゴロ・・・・・ピシャリっと
鳴らねばさまを付けられぬ と言えば
亭主は腹を立て それは昔の雷だ
大きな声で鳴らずとも 粋に端唄で鳴るのが当世
それがいやなら 出て行きゃれ
なに出て行けとえぇ
オオサッ 角を見るのも アァ厭になった
我がものと思えば軽ろし傘の雪
我がもの故に仕方なく 我慢をすりゃあつけ上がり
亭主を尻に引きずり女房 サア恋の重荷の子供を連れ きりきりと出て行きゃれ
いえいえここは私の家
お前は婿の小糠雨 傘一本もない身の上
汝そうぬかせば了簡がと 打ってかかるを
ゴロゴロゴロ
ゴロゴロゴロと鳴る音に
傍に寝ていた小雷 コヨコヨコヨと起き上がり
コレ父さん可哀想に母さんを
背負った太鼓じゃあるまいし 何でそのようにたたくのじゃ
堪忍してとコヨコヨコヨ
かかる騒ぎに隣りから 婆雷が止めに来て
マママこれ お前方はどうしたのじゃ 夫婦喧嘩は雷獣も
喰わぬに野暮を夕立は どんな太鼓の八つ当たり 出て行との一声は
月が鳴いたか時鳥 いつしか白む短夜に まだ寝もやらぬ手枕や
アレおなるさんもくよくよと
愚痴なようだが コレマ泣いているわいな
端唄に免じて五郎介どの 了簡見してとゴロゴロゴロ
いえいえ私しゃ 打たれたからは 了簡ならぬとゴロゴロゴロ
ならずば汝とゴロゴロゴロ
父さん待ってコヨコヨコヨ
これはしたりとゴロゴロゴロ
止めるはずみに雷婆 ウーンとばかりに倒るれば
こりゃころりではあるまいか
医者よ針医と立ち騒げば
入れ歯の牙を飲み込んで 胸につかえて苦しやと
言うにおかしく仲直り 夫婦喧嘩のあらましは
かくの通りと手ぬぐいで 汗を拭うて至りける
浮かれ浮かるる足の下 撞き出す鐘は浅草か
雲の上野の明け六つに 南無三夜明けに この姿(なり)では
流星「ハヤおさらば」
虚空はるかに(失せにけり)
(演出の都合上、変更になる場合があります。)
終
写真は2016年7月歌舞伎座で上演された「流星」の写真です。
天上界の雲がとても映えるセットです。
今回とは違うと思いますがイメージを膨らませて下さいませ!(≧▽≦)
清元 國惠太夫