清元「雁金」について

こんにちは。くにえです。

今回は第3回やのくら音楽会でも抜粋して演奏しました、雁金について書きたいと思います。

本名題を「色増栬夕映」(いろまさるもみじのゆうばえ)といいます。

この曲は1881年(明治14年)に江戸新富座で初演されました。

江戸新富座は関東大震災まで、現在の京橋税務署と東京都中央都税事務所があるあたりに建っていました。

 

「島鵆月白浪」(しまちどりつきのしらなみ) という歌舞伎演目の3幕目で使用された曲で、
主要人物が全員盗賊で、最後には各々の因果を悟り改心してゆくといった作品です。

 

3幕目「望月邸」の場面の内容は、以前大泥棒だった望月輝(もちづきあきら)と妾である芸者お照の色模様を扱ったもので、通う輝を今かと待ち焦がれるお照の心境を、秋のもの悲しい風情と哀愁に妖艶さをも感じさせる清元の名曲です。

ちなみにこの作品は2世 河竹新七が「河竹黙阿弥」を名乗る際のお披露目として書かれた作品でもあります。

 

 

 

雁金

作詞 河竹 黙阿弥    作曲 二世 清元 梅吉

 

(本調子)雁金の結びし蚊帳(かや)も昨日今日 残る暑さを忘れてし 肌に冷たき風たちて
昼も音を鳴く蟋蟀(こおろぎ)に 哀れを添える秋の末 露の涙のこぼれ萩
曇りがちなる空癖(そらぐせ)に 夕日の影の薄紅葉 思わぬ首尾にしっぽりと
結びし夢も短夜に 覚めて恨みの明けの鐘 早や夏秋もいつしかに
過ぎて時雨の冬近く 散るや木の葉のばらばらと 風に乱るる荻すすき
草の主は誰ぞとも 名を白菊の咲き出でて 匂うこの家(や)ぞ 知られける