花紅葉士農工商(文売り)プチ解説&歌詞

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こんにちは。くにえです。

 

今回は清元「文売り」をご紹介したいと思います(/・ω・)/

 

 

この記事は5~6分ででお読みいただけます。

 

 

 

文売り(ふみうり)

 

 

解 説

 

 

この曲は1820年(文政3年)11月に江戸玉川座で上演されました。

本名題を「花紅葉士農工商(はなもみじしのうこうしょう)」、通称を「文売り」と言います。

作詞者は近松門左衛門、作曲者は清元斎兵衛です。

 

元来は本名題にもあるように「士」「農」「工」「商」にそれぞれ見立てた四変化の舞踊で、逢坂山の関所を通る際に各人物が物語を語ってゆくという内容です。

 「士」・・・武士 松田左近

 「農」・・・田舎娘 おさん

 「工」・・・大工 臍右衛門(ほぞえもん)

 「商」・・・文売り

 

上記のように「文売り」は「商」の部分にあたり、元旦から15日までの期間に代書、懸想文(けそうぶみ・恋慕を綴った手紙)を男女に売って良縁を作るという職業でした。

今回主人公の文売りは、実は傾城大淀という太夫で金太郎(坂田金時)の母「山姥」でもあるという人物です。

 

 

曲の筋は遊郭で「小田巻」という傾城(花魁)と他の花魁が一人の男性をめぐって突飛ばしたり殴り合ったりの大ゲンカを繰り広げ、それを聞きつけた遣り手や仲居、店に出入りのある座頭、按摩、外を歩く巫女や山伏、中には雪駄下駄が片方脱げたまま駆けつけた者など、遊郭中の見物人なども大乱闘となって大騒ぎになってしまったという内容です。

ちなみに「他の花魁」というのは「文売り(実は傾城大淀)」ではないかと推測されますが、物語内では明確に現わされていません(^_^;)

 

 

 

歌 詞

 

 

同じ身すぎもさまざまに 目出度き春の懸想文

これは恋路を売り歩く 文玉章(ふみたまずさ)の数々は

口説上手に惚れ上手 または相惚れ片思い

縁のたねを結び文 これも世渡る 習いかや

 

文売り「さあさあ これは色を商う文売りでござんす

    私が商う文の数々は

    宵の睦言 まだな事 まぁ聞かしゃんせェ」

 

流れ忙しき憂き勤め 替わる夜ごとのその中に

惚れた男の意地悪う オットよしても暮れの鐘

その手で深みへまた俺を かける心と見てとった

どりゃと立つのを引き止めて

今日は取り分け色々と 言うこと聞くこと たんとある

その約束で今朝早う ござんす筈を憎らしい

初に逢瀬の絹ぎぬに 送る出口の嬉しさを

心に思うありたけを 言い交わしたを何じゃいな

野暮な口説の只中へ 降って脇から只一人

 

文売り「同じ廓に小田巻という傾城が 毎晩送る 文の数々」

 

三万三千三百三十三本ほど 指に廓の文使い

返事の無いに腹立てて 顔に紅葉の打掛けを

とって脱ぎ捨て私がそば

 

小田巻「これ かつみさん いやなお方に惚れはせぬ

    今までお前が大事にしたアノさんを

    今日から私に下さんせ」

                    (かつみ=男の子の禿の意味。女の子の禿=みどり)

 

もらいに来たと ずっかりと こっちも日頃の癇癪酒

 

別の花魁「これ小田巻とやら くだ巻きとやら せっかくお前の

     御無心じゃが もう百年も経ったのち 松葉を添えて

     主さんあぎょう」

 

あだ馬鹿らしいと言い様に 突きのく弾みにばたばたばた

縁から下へ落ちの人 あご痛たたと泣きいだす

 

騒ぎの声に小田巻が 遣り手 引き舟 仲居 飯炊き

出入りの座頭 按摩とり 神子 山伏に 占やさん

雪駄片しに下駄片し 草鞋(わらんず)掛けで来るもあり

 

台所から座敷まで 太夫さんの仕返しと

ここでは打ち合い 抓めり合い 銚子 燗鍋 踏み返し

そりゃこそ津波が打ち混ぜて 隠居が子を産む ヤレ取り上げて

ソレかつお節よ擂鉢よ がらがらピシャリっと鳴る音に

桑原くわばら観音経 秘蔵な子猫が馬ほどな

鼠を喰わえて駆け出すやら 屋根では鼬(いたち)が踊るやら

 

神武以来の悋気いさかい このこと世上に知られけり

 

よどまぬ水に月影も 暫し留むる逢坂の

関に残せし物語 勇ましかりける次第なり

 

 

 

参考資料
清元全集 清元集 清元五十番

 

 

 

 

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清元 國惠太夫