清元「鳥さし」について

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こんにちは。くにえです。

 

今回は第2回やのくら音楽会で抜粋して演奏いたしました、「鳥さし」についてご説明したいと思います。

 

本名題を「祇園町一力の段(ぎおんまちいちりきのだん)」といいます。前にも書きましたが、本名題とは歌舞伎などで使用する曲の正式名です。俗称を「鳥さし(鳥刺し)とも」といいます。

 

鳥さしは1831年(天保2年)に江戸市村座で初演されました。

 

この年は幕末の動乱に翻弄されることになる孝明天皇(121代)が生まれました。

イギリスではあの有名な「ロンドン橋」が開通した年でもあります。

 

細い竹の先端に鳥黐(とりもち)をつけて鳥を捕える行動や、それを生業とした人のことを「鳥さし」と呼びました。大正時代までよく見かけられたそうです。

 

※鳥黐とは、鳥や虫などを捕えるときに使う樹皮や果実より作られるネバネバした物質です。最近では化学物質などで作られています。皆さんも知っていると思いますよ!例えばハエ捕りやGホイホイなどです(笑)

 

本名題の通り、歌舞伎では「忠臣蔵」の七段目、「一力茶屋の段」で踊ったと伝えられています。

始まりの歌詞「さすぞえ」は鳥さしの「刺す」と「(盃を)さす」を掛けていたり、曲中、当時流行った「都々逸(どどいつ)」が組み込まれていたりする、軽妙な舞踊曲です。

また鳥の名前も沢山出てきます。いくつ分かりますか?!

 

※都々逸とは、七・七・七・五の文体に三味線や簡単な節を付けた名古屋発祥とされる唄のことです。古い唄や民謡などを文句に取り入れたために、大変流行しました。

 

 

鳥さし

(作詞:三升屋 二三治  作曲:初世 清元 斎兵衛)


(二上り)
さすぞえさすは盃 初会(しょかい)の客よ 手にはとれども初心(しょしん)がお
(本調子)
さいてくりょ さいてくりょ
これもんのにかんまえて まっ これもんのにかんまえて
ちょっとさいてくりょうか さいたら子供に羽根やろな
鶸(ひわ)や子雀(こがら)や四十雀(しじゅうから)
瑠璃は見事な錦鳥(にしきどり)

こいつは妙妙(みょうみょう) 奇妙鳥類 何でもござれ 
念佛(ねぶつ)はそばで禁物と 目当て違わぬ稲むらを狙いの的と ためつすがめつ
いでや手並みを一ト刺しと 一散(いっさん)走りに向こうを見て
きょろつき眼をあちこちと 鳥さし竿も其の儘(まま)に
手足伸ばして捕らんとすれば 鳥はどこへか随徳寺

烏(からす)鳴きさえエヽ
うまい奴めと なぶりオカメから そこらの目白が
見つけたら さぞ鶺鴒(せきれい)であろうのに

日がら雲雀(ひばり)の約束は いつも葭切(よしきり)顔鳥(かおとり)見たさ 
文にもくどう駒鳥(こまどり)の そのかえす書きかえり事

なぞと口説きで仕かけたら 堪(たま)った色ではないかいな
実(げ)に御贔屓(ごひいき)の時を得て 座敷の興(きょう)も面白き
息せき楽屋へ走り行く