酔姿奴感謝 ~白雪國兵衛~

こんにちは。くにえです。

皆様にカジュアルな邦楽をお届けするための「やのくら音楽会」ですが、折角なので色々な試みをしています。そのひとつに、新たな「清元」の新作を作っていることが挙げられます。

「えっ、古典なのに勝手に作っちゃっていいの?」と思われるかもしれませんが、実は代々の清元の作品も、流行や時事といった一過性のあるものをふんだんに取り入れ、その作品ができた時代をうかがい知ることのできるものが多く、古典を聴くことの楽しみの1つでもあるのです。

とはいえ、そんないっちょ前なものを作るほど芸が立っているわけでもありませんので、最初は皆様にお楽しみいただき、感謝を伝える作品にしました。それが「酔姿奴感謝~白雪國兵衛~」という新作です。

この曲は、我々の演奏のおぼつかなさを酔った奴「白(延美)雪國(惠太夫)兵衛」になぞらえ、酔ったオヤジギャグのように洒落や節回しを使いながら感謝までしてしまうという、なんとも都合のいい曲です(笑)。

第1回のやのくら音楽会で初演してから、毎回必ずと言っていいほど上演しているのですが、皆様にもこの曲を気に入って下さっているようで、「シラクニユキベエ良いね!」とか「シラフジクニベエ面白いね!」といったような感想をいただきます。

・・・「白雪國兵衛」ですからね!(笑)

まあ少しづつ覚えていただければ御の字だと思っていたら、なんと今年、国立大劇場にて舞踊付きの舞台まで実現してしまいました。皆様のお声があって実現したことなのです。本当に、心から感謝しております。

歌詞と動画も掲載しておきますので、まだやのくら音楽会にいらしたことがない方も、どうぞお聞きください。

清元 國惠太夫





酔姿奴感謝 ~白雪國兵衛~(よいすがたやっこのあいきょう ~しらゆきくにべえ~)
(作詞:川青二八 作曲:清元延美雪)

アレに見えるは赤鬼か 酒にのせられ魅(み)せられて 浮いた心に身をまかせ
酔った奴(やっこ)の上機嫌 瓢箪(ふくべ)下げたる白雪國兵衛

「いやあ ありがてぇありがてぇ 皆々様にご贔屓(ひいき)をあずかり この國(くに)、幸せ者でござりやす」

ちょうちん片手に千鳥足(ちどりあし) 右にふらふら 左にあぶねぇー 
弾いて焦(じ)らしてよろめいて 歩く姿もご愛嬌

「ハハー 良い銚子(ちょうし) されば酒にて 囃(はや)そうか」

「オラが酒人(しゅじん)は 武州阿部家(ぶしゅうあべけ)の御家来(ごけらい)(しゅ)うで 深いな酒(さけ)の優男 渡り酒(しゅ)う間(げん)この國が

殿さの使いに酒走(さけばし)り 村の酒(さか)ての茶屋の前 色白娘(いろじろむすめ)の熱燗に オラがお胸がどぶろくと 酒々(ささ)ぐ想いも酒酣(さけたけなわ)

先は急げど心はあとへ 眉に唾つけ髷直(まげなお)し はやる心と震え足
いざと駆け込む國兵衛が

利根の水面(みなも)に色さえも 流す心と碧(あお)き空 渡り鳥ときぬぎぬの すそ潔(いさぎよ)し榛名富士
(はかな)き泡と消えにける

「おっと もうこんな刻限(こくげん)か 皆々様に またお会いする日を楽しみに」

帯に手を掛け きゅっと締めて 繰り出す足は 酔い六方(ろっぽう)

「はや おさらばー」

月にゆられて行きにけり