夕顔の巻(ゆうがおのまき)源氏物語

作詞

萩原雪夫

作曲

清元栄三郎 富崎冨美代(琴)

初演

1995年(平成7年)9月 歌舞伎座

本名題

なし

参考資料

松竹演劇部 演劇界・舞踊名作案内(国立劇場図書閲覧室資料所蔵)

解説

この曲は作・萩原雪夫、作曲・清元栄三郎、作曲(筝)富崎冨美代。
1995年(平成7年)9月 歌舞伎座「松竹百年記念・十一代目市川團十郎三十年祭九月大歌舞伎」の昼の部・二に初演されました。
また清元志寿太夫師が御歳97での新作出演ということも話題になりました。

「源氏物語」を題材にした作品は1933年(昭和8年)、当時宮廷物を舞台にするということで初日前日に警視庁より上演禁止令が出てから18年後の1951年(昭和26年)3月歌舞伎座での上演以来、今日まで数々の脚本家・演出家で舞台となっています。
中でも今作は「夕顔の巻」にスポットを当てています。


辺りは暗くなるころ、光源氏と藤原惟光は京の都、五條辺りを訪ねてくる。
八月十五日の今日、夕顔と共に仲秋の名月を見ながら酒を酌み交わし語り明かそうと訪ねてきたのである。

光源氏は葵の上を正妻に迎えていたが、四歳年上でなかなか馴染めず、安らぎを他の女性に求める日々を送っていた。
少し前まで通っていた六條御息所(ろくじょうみやすどころ)の所へ行く途中に垣根に夕顔の咲く家に住む女・夕顔を知った。
質素なりにも美しい夕顔を訪ね貴族の着る豪華な小袿(こうちき)を贈る。夕顔は益々美しくなり光源氏の所望通りに一指し舞い、そのうち連れ舞となる。
光源氏は心浮き立ち、来年の仲秋の月見は清涼殿に連れて行きたいと思うのであった。

いつしか場所は清涼殿になり二人は連れ舞を楽しむが、そこに最近お渡りの無い六條御息所が現れ、光源氏に怨み言を投げかける。
そして夕顔に対しては怒り、怨み、髪を振り乱して襲い掛かるのであった。この六條御息所は生霊で夕顔を激しく打ち命を奪ってしまう。そこに藤原惟光、侍女右近も駆けつけるが時すでに遅し。

突然の雷鳴稲妻。

夕顔の小袿を抱き空を睨む光源氏の傍らに不敵な笑みを浮かべる六條御息所の生霊が浮かび上がっているのであった。

歌詞

萩尾花 桔梗も季(とき)を違えずに 色づき染めし都路や
賀茂の瀬音も静かにて 五條のわたり侘住居
虫の鳴く音もひそやかに おぼろに浮かむ夕顔の花

「セリフ」

そも馴れ初めはこの宿の ひそかに咲ける白き花
薫りゆかしき扇に添えし 花に触れたる我が想い
心あてに それかとぞ見る白つゆの ひかり添えたる夕顔の花
寄りてこそ それかとも見め黄昏に ほのぼの見入る花の夕顔

「セリフ」

秋爽やかなり月の宴 袖は連らね裳裾を染めて
挿頭(かざし)の色もとりどりに 歌人集う清涼殿の
恋と恋との歌合わせ

「セリフ」

花鳥風月の遊びには 色香めでたき香合わせ
上るを競う双六や 碁も打ち飽きし折々の
さて今様は夜もすがら 琴弾き給え笛も吹き候

音羽の山より出でたる月の 賀茂の流れにくだけて散りて
ちりて砕けて面白や 唄うて舞うて
いざや酒を汲もうよ

三つの車に法の道 火宅の門を出でぬらん

夕顔の花の破れ車 やる方なきこそ悲しけれ

我れ世にありし古は 華やかなりし身なれども
衰えぬれば朝顔の 日影待つ間の有様なり

かかる恨みを晴らさんと あら恨めしや思い知らずや思い知れ

「セリフ」

風にまたたく灯火の 消ゆると思う心地して
辺りを見れば烏羽玉(うばたま)や 闇にも咲ける夕顔の
花は再び咲かせやと 面影ばかり亡き跡の
白き花にぞ残しける

動画