扇獅子(おうぎじし)

作詞

永井素岳

作曲

二世清元梅吉

初演

1897年頃(明治30年頃) 某日本橋芸者の会

本名題

扇獅子富貴の英(おうぎじし ふきのはなぶさ)

参考資料

清元全集 邦楽舞踊辞典

解説

この曲は1897年頃(明治30年頃)、日本橋の芸者さんが催した会の為に永井素岳が作詞をし、二世清元梅吉が曲を付けた舞踊曲で、短いながらも春夏秋冬が表現されています。
初演が日本橋の芸者さんの会であるため、歌詞には日本橋界隈や魚河岸など、付近の名所が出てきます。

例えば「土一升の日本橋」は「土一升に金一升」のことわざで地価がとても高い重要な場所であることを意味しています。
「昔をしのぶ紫の」の「紫」は江戸(江戸紫)の意味。明治30年頃発表なので江戸を知る人は多く居たのでしょう。
「忍ヶ岡」は現在の鶯谷・上野です。

歌詞

日の影の富士にうつろう風景は
よその国にはあらがねの 土一升の日本橋

昔をしのぶむらさきの 今朝は三筋の初がすみ
其の弾き初めにさきがけを 競う庭木の梅咲きて
夜飼に馴れし鶯の 初音床しき匂い鳥
岸の柳も未だ春の 若き姿の浅みどり
遠く望めば青々と 忍ヶ岡も夏の来て
花も若葉と衣がへ 卯の花雨にしめやかな
軒の玉水手枕の 耳に嬉しきひと声を
雲井に残すほととぎす

昨日の雨も秋風に 晴れて隈亡き月影を
浪に乗せ来る海原を 越えて幾艘魚河岸へ
船の櫓拍手勇ましく 天飛ぶ雁の後や先
時雨も雪に降りかわり 隅田はさこそと盃を
開くや花の冬牡丹

時に扇の獅子の曲 差す手引く手も打ち連れて
賑う家こそ目出たけれ

動画