宮比御神楽(みやびのみかぐら)

作詞

鎗田有松(福地桜痴の代作説有り)

作曲

初代清元寿兵衛(初代清元梅吉)(二世清元齋兵衛説有り)

初演

1875年(明治8年)10月

本名題

なし

参考資料

清元集 清元全集 邦楽舞踊辞典

解説

この曲は1875年(明治8年)10月に開曲されました。

太陽神「天照皇大神(あまてらすおおみかみ)」が弟の「素盞嗚命(すさのおのみこと)」の乱行に怒り天の岩戸に隠れてしまったという「岩戸伝説」が題材になっています。

天照皇大神が岩戸に籠ってしまい、世界は常闇になってしまいます。大勢の神々は何とかしてご機嫌を直してもらいたいと岩戸の前で神楽を奏し、「天鈿女命(あまのうづめのみこと)」が舞います。その舞いが面白かったので大勢の神々は大声で笑いどよめきます。
何が起こったのかと天照皇大神は岩戸を細目に開けて外の様子を透き見るところを、隠れていた「手力雄命(たじからおのみこと)」が力の限り岩戸を押し開け、世界は再び明るくなるのでした。

「宮比」とは岩戸の前で舞った宮比の神「天鈿女命」を指してます。

 

初演は四世清元延寿太夫、清元寿兵衛、他。

歌詞

天地のひらけし御代は久方の 天の岩戸に神いさむ
神楽の役目とりどりに 集いし神の故事を
拙き筆に写し繪や

そも神代の昔 素盞嗚(すさのお)の よしなき業に姉神の
怒りの色の彌増さり 天の岩戸に幽居給えば
天上天下夜昼の 別ちもあらぬ常闇に
八百万 神の憂いぞ限りなく 御心を慰めんと
柾木の枝にかけまくも 八咫の鏡に光り添う
庭の篝火勇ましく 神楽を奏し奉る

その時 於茂比兼(おもいかね)の神 宇受女(うづめ)一指舞いそうらえ
さては辞すとも時にこそ いらえの言もあらなくに
殊勝に立ちて出で給もう そもこの神は皇産霊(むすび)の
神の御子にして天太玉の 奇霊に妙なる故ありて
宮比の神を生み給い 立ち出で給う御姿
天の真柝を桂とし 日蔭の蔓を襷に掛け
手草に笹葉結付けて 千巻の矛に鈴添えて
彼の宇気槽(うけふね)を踏みならし うたい奏でる神楽歌

一二三四五六七八九十 百千萬代千早振る
神の見る目も恥ずかしや 女神に羞じて得すまじき
胸乳露わに裳の紐も ほどのあたりにおし垂れて
いとしどけなく舞い納む
このとき諸神聲を上げ 游受売(おづめ)おけ さる女戯れものよと
高天が原の動くばかりに 賞めたりける

天照大神は集いし神の諸聲に 賑おう様を聞こえ召し
宮比の神の舞い踊り 戯れ俳優の面白く
恠しゆかしとおぼされて 怒りもついにやわらぎて
天の岩屋戸細目に開け 隙見し給うその折こそ
児屋根太玉御鏡もて 御姿写し参らする
手力岩戸にもろ手を掛け 力任せに押し開き
神々裳裾にまつわりて いく萬代を奏でける

さるほどに時移りて 東雲告ぐるくだかけの
東天紅と鳴り渡る アナ心地よの御事と
敬神愛国ことごとく 五常の道も明らかに
皇を敬い奉れば 五風十雨時も違えず
千穐萬歳清元の 尽きせぬ流れぞ目出度けれ

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