船(ふね)

作詞

内田誠

作曲

三世清元菊輔(のちの清元寿國太夫)

初演

1938年(昭和13年)夏。東京 浜町 「菊寿会(日本橋倶楽部)」

本名題

なし

参考資料

清元全集 清元集 清元五十番

解説

この曲は「花」「春」と共に作詞されたうちの一曲で三世清元菊輔(清元寿國太夫)が主催する「清元菊寿会」で発表されたものです。
夏の隅田川の風物詩が綴られており、花火見物の船、涼み船、粋な屋形船と当時の面影を偲ぶに充分な内容になっています。
歌詞にも「勇みの上天気」と雲の一かけらも無い天気を誇張した表現や「手管」や「かけ橋」と隅田川近くの新吉原を匂わせる雰囲気も醸し、陽気に暮らす江戸っ子達の風景が想像できる名曲です。
曲自体は約10分程のものですが、最初部分に「佃」をベースとした、圧巻で気持ち踊る難易度の高い前弾きが約2分程、途中の合の手や全体を通しての軽快なリズムと、三味線の聴きどころが満載の作曲になっています。

歌詞

昨日の雨にひきかえて 今日は勇みの上天気
川一番の親船も 子分子方の屋根船も
さあっさ漕げ漕げ 惚れたら通え
ポンと打ち上げ花火なら 上りつめたる流れ星
どこへ消えよと そりゃ先次第
どうで手管と知りながら 仕掛け花火に手をやいた
我が身で我が身が馬鹿らしい
弾く三味線の高調子

どこもかしこも大浮かれ すすめ上手につい呑まされて
雲にかけ橋かすんで見える 粋な船頭衆も艪櫂(ろかい)を捨てて
オット危ない 飛んだ落っこち濡れの幕
月の出汐に辺りは黒幕 夜となり
提灯連ねて大陽気 賑おう川のすずみ船

動画