夕顔棚 プチ解説&歌詞

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こんにちは。くにえです。

 

今回は清元「夕顔棚」のプチ解説と歌詞をお送りいたします。

 

 

この記事は5~6分ででお読みいただけます。

 

 

 

夕顔棚(ゆうがおだな)

 

 

解 説

 

作詞 川尻清譚(かわじりせいたん)  作曲 清元榮寿郎(作曲時は前名の清元栄次郎) 振付 坂東三津之丞

初演 1951年(昭和26年)3月 歌舞伎座 夜の部 三幕目

 

この曲は英一蝶の「夕顔棚の夕涼み」の図と月岡芳年「月百姿(つきのひゃくし)」の「楽しみは夕顔棚の夕涼み 男はててら 女は二布して」の浮世絵からヒントを得て作られました。

 

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月岡芳年「月百姿(つきのひゃくし)」の一枚

 

初演の配役は

爺   七代目坂東三津五郎

婆   二代目市川猿之助

里の男 二代目市川笑猿

里の娘 三代目市川松蔦

 

演奏は清元志寿太夫師、清元栄次郎師でした。

 

 

舞台は暑い夏の夕暮れ時。

婆さんはお風呂へ入っていて、それを待つ爺さんは夕顔棚の下で一杯始めています。

 

すると近所から盆踊りの音が聞こえてきます。

爺さんは昔は踊りや唄の上手かったこと、案山子を婆さんと間違えて抱き着いてしまったことなど、二人は昔の時分を思い出し懐かしむのでした。

 

そこへ里の若い男女たちがやってきてこの老夫婦を盆踊りのへと誘うのでした。

 

とてもほのぼのとしたコミカルな作品です。

 

初演当初は戦後の爪痕残る時代でした。

古き良き日本の風景や穏やかな平和な日本を取り戻したいという想いもこの作品には随所に見受けられます。

 

 

歌 詞

 

水に写ったあの月影は 合わせ鏡の双面

 

夏の日もいつしか暮れて この里は昼の暑さを忘れ水

河原づたいの涼風に 蚊やりの煙り軒近く

しばし端居の片あぐら

 

「セリフ」

 

汗を流した風呂上り さっぱりとした浴衣がけ

うちわ使いの気も軽く 

 

「セリフ」

 

楽しみは夕顔棚の下涼み 男はててら女はふたの

誰に気兼ねのなか空の 月に浮かれた踊り唄

来るか来るかと焦がれて待てば 河原やなぎの影ばかり

さりとは影ばかり

 

「セリフ」

 

しのび忍びて主待つ夜道 月の影さへ気にかかる

さりとは気にかかる

 

「セリフ」

 

おんな十七 むすめの盛り 誰に見しょとて髪結い上げて

唄が好きだで踊りに行けば 握る手と手が縁のはし

愛しがられてまた逢いたさの 飛んでゆきたい羽根ばたき

ぱっと浮名の立ち姿 案山子をお前と間違えて

抱きついたではないかいな

 

おらら二十の年頃は 鄙(ひな)には稀な やさ男

手振り自慢で踊りに出たら 音頭上手につい打ち込んで

逢う度ごとに登りつめ お閻魔様に願掛けて

離れまいぞの約束を 嘘をついたらこの舌を

抜かれる怖さに添い遂げた

 

「セリフ」

 

機も織るやら 藁砧(わらぎぬた) とんとん拍子 相づちの

更け行くままの夜もすがら 入るさの月の消ゆるまで

賤が手わざの共稼ぎ

 

「セリフ」

 

折から里の若者が 走り遣いに木戸のくち

 

「セリフ」

 

惚れた惚れたが手に手を取れば 言えぬ思いの増すばかり

さりとは増すばかり 言えぬ思いの増すばかり

よい子の良い子のよいやさ

 

「セリフ」

 

仲もよいよい良い夫婦 尽きぬ縁のいつまでも

踊り忘れぬすずめ時

 

「セリフ」

 

惚れた惚れたが手に手を取れば 言えぬ思いの増すばかり

さりとは増すばかり 言えぬ思いの増すばかり

よい子の良い子のよいやさ

 

恋に焦がれて逢瀬を重ね 言えぬ思いの恥ずかしや

さりとは恥ずかしや 言えぬ思いの恥ずかしや

よい子の良い子のよいやさ

お前百までわしゃ九十九まで 尽きぬ縁の共白髪

さりとは共白髪 尽きぬ縁の共白髪

よい子の良い子のよいやさ

 

 

 

参考資料


清元集

演劇界(舞踊名作案内)

国立国会図書館デジタルコレクション

 

 

 

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写真は2015年6月、歌舞伎座「六月大歌舞伎」の夕顔棚の舞台です。

 

 

 

 

 

 

 

 

清元 國惠太夫